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見る者を魅了 ガッツあふれる小兵選手の躍動

スポーツライター 浜田昭八

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米大リーグにも"小さな巨人"がいる。2メートル近い長身選手がゴロゴロいる中で、アストロズの3番二塁のホセ・アルテューベが輝いている。なんと身長168センチ。日本の高校野球でプレーしても目立たない小兵選手だ。

ドジャースとのワールドシリーズ第5戦で、元広島・前田健太に同点3ランを浴びせて日本のファンにも衝撃を与えた。小柄な内野手といえば小回りがきく1、2番タイプを思わせるが、フルスイングする強打者だ。

もともと、ミートがいい打者。2014、16年の首位打者であり、今年も3割4分6厘の高打率で3度目のタイトルを獲得した。足も速く、32盗塁はア・リーグ3位。他球団の長距離砲と張り合うためにウエートトレーニングでパワーをつけ、今年は24ホーマーを放った。

仲間が認めるナンバーワン

大リーグではシーズンオフに選手間投票で「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)」を決めている。それのア・リーグ野手部門で、同選手が2年連続で選ばれた。仲間に「ナンバーワン選手」と認められるのは、名誉なことだ。小柄なことに、なんのひけ目も感じていない様子は爽快だ。

日本プロ野球でも選手の大型化は進んでいる。1980年のオールスター戦に出場した田尾安志(当時中日)の回想によると、「身長順に並んだセ・リーグで、173センチのボクより後ろにいたのは168センチのヤクルト・若松勉さんだけだった」。このころから、185センチ前後の選手が増えた。

それでも、160センチ台の選手は今でもチラホラいる。167センチの左腕、ヤクルト・石川雅規はこれまでの16シーズンで11度、2桁勝利を挙げた。武器はキレのいい速球と制球のよさだ。打者の狙いを外すクレバーな配球に"ごまかし"はない。

169センチの楽天・美馬学も強気の投球。13年の巨人との日本シリーズで2勝して最優秀選手(MVP)になった。公式戦では2桁勝利のカベに阻まれてきたが、7年目の今季、初めて11勝を挙げた。西武から移籍入団した1歳年長、32歳の岸孝之に対抗心を燃やした。小兵には負けん気の強い人が多い。背丈は関係ないといいながら、陰で鍛錬し、工夫している。

野手ではともに167センチのDeNA・柴田竜拓、オリックス・西野真弘が頑張っている。柴田は今年後半、2番二塁に抜てきされた。左打ちの打撃はしぶとく、小技もこなせるので重宝に扱われている。

西野も左打ちの二塁手。2年目の昨年は主に6番を任されてフル出場した。だが、今年は故障がちで控えに回った。それでも、俊足としぶとい打撃は健在。OBの元本塁打王・長池徳士臨時コーチは、小兵らしからぬパワフルなスイングを高く評価しており、来季の巻き返しが期待される。

ちなみに、現役で最も小柄な選手は、オリックスの育成選手、162センチの坂本一将。先ほど終えた初の契約更改で推定年俸は10万円アップの260万円になった。支配下登録への道を着実に歩んでいるようだ。

いでよ「小さな巨人」

その昔には、160センチ台の名選手がたくさんいた。"小さな大投手"と最初にいわれたのは、広島創設時のエース長谷川良平。167センチの体をフルに使い、14年間で197勝を挙げた。「救援投手に助けてもらったといえる勝ち星は1つだけ」というのが自慢だった。

阪神の"牛若丸"吉田義男は167センチの名遊撃手。阪神の監督を務めたときは大型選手を好む傾向があった。「小柄のハンディをさんざん味わったから」とのことだった。

アルテューベ並みの小さなMVPは72年、168センチの阪急・福本豊と78年、ヤクルト・若松。福本はいわずと知れた"世界の盗塁王"。走ることばかりが注目されるが、208ホーマーを含む772長打をマークした強打者だった。「小さく固まるな」という、恩師西本幸雄の教えを守った結果だった。

若松は71年のドラフト3位入団。そのときの1位は同じノンプロ出身の外野手・山下慶徳だった。球団、マスコミから差別的な扱いを受けて若松の反骨心に火がついた。それが現役19年間、通算打率3割1分9厘の好成績につながった。

193センチの日本ハム・大谷翔平、197センチの阪神・藤浪晋太郎ら、スケールの大きい選手の存在は魅力的だ。それと同じくらいに、負けん気にあふれた小兵選手の活躍を見るのは楽しい。いでよ「小さな巨人」。それは小さなアスリートたちの励みにもなる。(敬称略)

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