東芝、テレビ事業を中国ハイセンスに売却 129億円
東芝は14日、赤字が続くテレビ事業を中国電機大手の海信集団(ハイセンス)グループに売却すると発表した。テレビ事業を担う子会社の株式の95%を約129億円で譲渡する。原発事業の巨額損失で財務が傷んだ東芝は非中核事業の売却を急いでおり、1960年に日本初のカラーテレビを生んだ同事業も撤退対象とした。かつて世界首位を独走したパソコン事業の扱いが次の焦点となる。
「レグザ」ブランドのテレビを製造・販売している東芝映像ソリューション(青森県三沢市)を売却する。ハイセンスグループの青島海信電器と株式譲渡契約を同日結んだ。残り5%の株式は東芝が引き続き保有する。売却完了は2018年2月末以降の予定。「レグザ」ブランドもハイセンスに譲渡する。
従業員約780人の雇用はハイセンスが買収後も維持する。青森県の生産拠点や国内の販売網もそのまま同社が活用する。ハイセンスは東芝映像ソリューションを通じ、日本国内で「レグザ」ブランドのテレビ開発や販売、保守サービスを展開する。
東芝映像ソリューションは17年3月期に約118億円の債務超過に陥っている。このため東芝の売却益(税引き前)は約250億円となる見込み。売却益は18年3月期の連結決算に計上する。
テレビを主体とする東芝の映像事業は17年3月期が129億円の営業赤字で、18年3月期も7期連続の営業赤字が避けられない見通し。14年度は世界で535万台を販売したが、韓国・中国メーカーの価格攻勢に押され、現在は国内のみの年間約60万台にとどまる。海外はライセンス供与型の事業に切り替えて縮小した。
東芝は15年に会計不祥事が発覚して以降、事業売却により財務の立て直しに努めた。16年3月に白物家電の中国・美的集団への売却を発表。成長期待の高かった医療機器事業もキヤノンに売却した。
16年末に米原発子会社の巨額損失が発覚すると、稼ぎ頭の半導体メモリー事業の売却交渉を開始した。9月末に米ベインキャピタルが主導する日米韓連合と売却契約を結び、各国独占禁止当局の審査手続きに入った。
08年3月期に過去最高の7兆2088億円を記録した東芝の連結売上高は、相次ぐ事業売却によって半減する見通し。売却予定のメモリー事業を除くと、東芝の18年3月期の売上高は3兆7000億円で、営業利益は100億円程度にとどまる見通し。
半導体メモリーの売却後はこれまで脇役だったエレベーターなどのビル関連や発電システムなど「社会インフラを軸とした企業」(綱川智社長)となる。ただ、年間1千億円を稼ぐ事業は見当たらない。AI(人工知能)やIoT(あらゆるモノがネットにつながる)を展開するICT部門もどこまで収益を拡大できるか不透明だ。