ワタミ、脱「和民」で客戻る 4年ぶり経常黒字
ワタミが低迷から脱しつつある。14日発表した2017年4~9月期の連結決算は経常損益が赤字予想から一転、4年ぶりの黒字に転換した。主力の居酒屋「和民」の看板を外して焼き鳥店などへの転換を一気に進め、客が戻ってきた。今後もステーキやイタリア料理など多角化路線で生き残りを図るという。はたして長いトンネルを抜けたと言えるのか。
「社員とともに一丸となって進めた改革が少しずつ実を結んでいる」。14日都内で開いた記者会見で、ワタミの清水邦晃社長はこう強調した。
4~9月期の経常損益は1億5600万円の黒字(前年同期は9億2600万円の赤字)。営業損益と最終損益は赤字だが、それぞれ7億円、10億円の赤字とした期初予想から赤字幅が2億円強まで縮小した。通期はすべて黒字を見込む。
回復をけん引したのは焼き鳥店「三代目鳥メロ」と鶏料理中心の居酒屋「ミライザカ」だ。競合の鳥貴族をヒントに16年6月から出店を始め、客足が順調とみるや今年3月から一気に「和民」からの転換を加速した。
友人らと「ミライザカ」を利用するという男性会社員(35)は「当初はワタミの店舗だと分からなかった。お酒が低価格なので利用しやすい」と満足げだ。新業態の好調で、伸び悩んでいたワタミの既存店売上高は9月まで13カ月連続で前年比プラスで推移。客数も4~9月に前年同期比7%増えた。焼き鳥や唐揚げなどは原価率が低く、利益面での貢献も大きい。
一方で不採算店の閉鎖も進め、14年3月末に587店あった「和民」「わたみん家」など和民ブランドの居酒屋は17年9月末で約200店に減少した。9月末の「鳥メロ」「ミライザカ」は計190店。今期中には和民ブランドの店舗数を抜く見通しで、「わたみん家」は19年春までにすべて新業態に転換する。17年4月にはレストラン事業部を新設し、ステーキ店など居酒屋以外の出店にも力を入れる。
ワタミの業績不振が顕著になったのは14年3月期から。売上高で過去最高を更新しながら営業利益が7割減った。積極出店と同時に安売り競争を仕掛けたことが自らの首を絞める形となり、不採算の店が続出。15年3月期には経常赤字に転落した。さらに「365日24時間死ぬまで働け」といった社訓が問題視され、「ブラック企業」のイメージから客離れに拍車がかかった。
今期の売上高はピークから4割減の960億円と、11年ぶりに1000億円を下回る見通しだ。無駄を排除してきた結果でもあるが、今期予想の売上高営業利益率は0.5%で、11年前の4.1%に遠く及ばない。
多種多様な業態を展開する手法は共通化できる部分が少なくコストもかさむ。多角化はあくまで窮余の策だ。大量出店に堪える新たな主力ブランドをどう育成するか。完全復活への道のりはまだ遠い。(小田浩靖)