イタリアまで…W杯予選敗退「来るべきときが来た」
来年夏、ロシアで開かれるサッカーのワールドカップ(W杯)出場をイタリア代表が逃した。11月13日に行われた欧州予選プレーオフ第2戦でスウェーデンに0-0で引き分け、初戦を0-1で落としていたイタリアは1958年大会以来の予選敗退が決まった。60年前、イタリアが出場を逃した大会の開催国はくしくも今回敗れたスウェーデンだった。
■12年ユーロ準優勝以降は輝きなく
ブラジルの5回に続き、ドイツと並ぶ4回の優勝を誇る名門イタリアの予選敗退はショッキングだ。一方で「来るべきときが来た」という気もする。
イタリアはサッカー大国であることは確かだが、2006年ドイツ大会に優勝した後は10年南アフリカ大会、14年ブラジル大会とも1次リーグで敗退している。大きな成果を挙げたのは12年ユーロ(欧州選手権)の準優勝が最後で、近年は持ち前の攻撃力に勝負強さを加味したスペイン、魅力あるタレントを次々に輩出するドイツやフランスの後じんを拝している印象がある。
イタリアの国内リーグ、セリエAも1990年代までは世界各国のスーパースターが集うリーグだったが、今はその面影はない。イングランドのプレミアリーグ、ドイツのブンデスリーガ、スペインのラ・リーガ、フランスのリーグアンとともに今でも欧州五大リーグの一つに数えられるものの、スタジアムなどに対する設備投資は進まず、ユベントスなど一部の例外を除いて、旧態依然の感がある。そうした勢いの有無も今回の結果に少なからず反映しているのではないか。
欧州予選G組でスペインと同居する不運はあった。攻撃力の差で首位通過をスペインに許し、プレーオフはA組2位のスウェーデンとの対戦。伝統の守備はいついかなるときも計算が立つイタリアだが、攻撃に関しては相手が攻めて出てくれないと得意のカウンターが発動しにくくなる。
オランダと勝ち点19で並び、得失点差で2位の座をもぎとったスウェーデン(1位はフランス)は派手さはないが、恵まれた体格の選手たちが全員でハードワークする勤勉さが持ち味。プレーオフ初戦で先制した後は、第2戦も含めて、その資源の大半を守備に割き、2006年ドイツ大会以来のW杯出場を手繰り寄せた。人が林立するゴール前の守りをイタリアは最後まで崩せなかった。
じりじりする展開にやきもきし、焦燥にもかられながら、イタリアの試合でこういう感情になったのは「ボストンの試合以来だ」と思った。1994年のW杯米国大会の決勝トーナメント1回戦でナイジェリアに先制されたイタリアは土壇場の88分にロベルト・バッジョのゴールで追いつき、延長戦でのPKで勝ち越し点をあげた。続く準々決勝のスペイン戦もR・バッジョの勝ち越しゴールが決まったのは88分だった。崖っぷちで次々に奇跡を起こすR・バッジョにフォックスボロに詰めかけたイタリアのサポーターたちは狂喜乱舞したものだ。
■前線に華のあるタレント不在
かつてのイタリアには堅守を誇るチームであるがゆえに、その盾の中から果敢に駆けて出て、ゴールを陥れる一騎当千のつわものがいた。R・バッジョの後にはデルピエロ、トッティのような華のあるタレントがいた。スウェーデンの固い守りを、ひたすらルーティンのような攻めでこじ開けようとするイタリアを見ながら、そんな時代への郷愁に誘われたのは私だけだろうか。
12年のユーロで準優勝したときは、「悪童」と呼ばれたFWバロテリとカッサーノというその兄貴分のMFがいた。守りが自慢のチームは、前線にそういう破格の選手がいてこそ、攻守の歯車がかみ合うものだ。そういう意味で今回のイタリアは攻撃に転じたときのタレントにインパクトがなさ過ぎた。
イタリア代表のゴールを守り続け、代表キャップ数を175まで伸ばしたブフォンは、おそらくこれが代表公式戦最後の試合になるのだろう。出場を決めていれば、前人未到の6回目のW杯となっただけに本当に残念でならない。
ロシアに行けないチームの列に、前回3位のオランダ、昨年のユーロで旋風を巻き起こしたベイル(レアル・マドリード)を擁するウェールズにイタリアも加わった。他の大陸に目を転じてもチリ、米国、コートジボワール、カメルーン、ガーナなどが予選落ちしている。
イタリアがいないW杯を想像すると、風景として寂しい気がするが、この予選の厳しさがW杯の品質を保証しているともいえる。常連国の相次ぐ敗報が、W杯戦国時代の先触れなら、来年のロシアで日本もその時代の波に乗り遅れないようにしたいものである。
(武智幸徳)