ドローン活用、救急車待たず命救えるか
米スウィフトとエアロセンスがデモ飛行
ドローン(小型無人機)開発の米スウィフト・エンジニアリング(カリフォルニア州)とエアロセンス(東京・文京)は7日、垂直離着陸(VTOL)型ドローンのデモ飛行を公開した。それぞれ自社開発の機体をあらかじめ設定した航路で自動飛行させた。両社は7月にVTOL事業での協業を発表している。
「大変だ、倒れている人がいる」。道ばたで倒れた人を通りがかりの人が見つけ、心臓マッサージをしながらスマートフォン(スマホ)を開く。程なくしてアプリで通知を受けたドローンが、自動体外式除細動器(AED)を運んできた――。7日、千葉県市原市にある双葉電子工業の「勝間ラジコン飛行場」でスウィフトのVTOLを使用したこんなデモが披露された。
VTOLは幅3メートル程度で、最大1キログラムの荷物を最大2時間運べる。緊急時にVTOLに対しスマホアプリから位置情報を発することで、AEDが見当たらない場所でも救急車の到着を待たずに救命できるようにした。患者と医療関係者をつなぐ緊急情報共有アプリを提供するCoaido(コエイド、東京・文京)と組んだ。実用化にはコエイドの事業拡大やVTOLの法整備が必要だが、過疎地などで活用できると見ている。
スウィフト社のVTOLは飛行の際にブレが少なく、タカのように飛ぶ様子が印象的だった。複数のプロペラを持つ一般的なマルチコプター型のドローンと比べ、VTOLはバッテリーが長持ちし、安定して飛行しやすい。災害現場への医薬品輸送や土木測量、農業分野など、幅広い活用が見込まれている。
エアロセンスもVTOLを飛ばした。同社は米製薬大手メルクの日本法人であるMSDなどと福岡市の離島向けに医薬品を配送する実験をしているほか、アフリカ南部のザンビアでもVTOLを活用した事業を検討している。エアロセンスのVTOLは幅1.5メートルとスウィフト製に比べやや小型で、20分で約30キロメートル程度飛ぶという。
スウィフトの松下弘幸会長は「ヒロ松下」の名で知られる元自動車レーサーで、パナソニック創業者の松下幸之助氏の孫でもある。1983年にフォーミュラカーの部品メーカーとしてスウィフトを創業した。現在は航空宇宙部品の開発が中心となっているが、ドローン開発も10年以上前から始めた。
エアロセンスはソニーとロボット開発のZMP(東京・文京)の合弁会社。谷口恒社長はZMP社長として自動運転車の開発を進めながらエアロセンスの社長も兼任している。谷口氏が16年秋頃に松下氏と連絡を取り、協業につながった。谷口氏は「VTOLの法整備はまだ道半ば。スウィフトと共に新たな規制を作り上げていきたい」と意気込んだ。
(企業報道部 吉田楓)
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