「チーム芹沢」入りで開花 ゴルフ・西山ゆかり(上)
宮里藍が32歳で現役引退。女子ツアーは年々、低年齢化が進む。今季、賞金ランキング50位以内のシード圏内につける日本人選手で、30歳以上は7人。35歳の西山ゆかりは、大山志保(40)に次ぐ年かさ。優勝者となると、KKT杯バンテリン女子(熊本)を制し、2年ぶりのツアー2勝目を飾った西山のほかは、上田桃子(31)と吉田弓美子(30)だけだ。
ただ、師匠の芹沢信雄によれば「年齢はいってるけれど、ゴルフに対する気持ちは20歳」。西山がゴルフを本格的に始めたのは神奈川・藤沢西高を卒業してから。キャリアは浅い。
湘南台駅前ですし店を営む両親がゴルフ好きで、幼稚園の時に母・秀子について練習場に行き、初めてクラブを握った。中学2年で初ラウンド。年に1度は、夏休みの旅行でファミリーゴルフを楽しんだ。
父の武光が、プロの道に進むのを望んでいるのはわかっていたが、西山は「みんなでワイワイやるのが好きなタイプ」。中学は陸上部、高校はハンドボール部で活躍し、ゴルフとは距離を置いていた。「高校を出てからでも、プロになれると思い込んでいたし」
静岡・朝霧CCに研修生として入社。しかしプロテストに失敗すると、思い悩む日々が続いた。ゴルフをやめようと思ったことも。はり治療院で紹介された芹沢と一緒にラウンドしたのは25歳の冬だった。足を使って打つことや練習法を教えられ、「衝撃を受けた」という。「クラブの入り方や(インパクトの)音が変わるのを感じたし、飛距離もすごく伸びた」。翌2008年のプロテストで合格。米ツアー72勝のアニカ・ソレンスタムが主宰するアカデミー(フロリダ州オーランド)に13年まで毎年、武者修行に出かけた。
■「今年はうまくて強いプロに」
芹沢の門下生になったのは下部ツアーで2勝した翌年の14年から。藤田寛之らがいる「チーム芹沢」入りで、遅咲きの花が開いた。この年、初めてシードを獲得(43位)。15年meijiカップ(北海道)では師匠がバッグを担ぎ、鈴木愛とのプレーオフの末にツアー初優勝を飾った。
「負けず嫌いで根性がある」と芹沢はいう。4月のバンテリン杯も、地元熊本出身の上田とのプレーオフを「完全アウェー」の中で制し、勝負強さを発揮した。
18番を迎えたときは2打差。優勝は無理だろうと考えていたが、師匠からは「優勝できないからといって、最後の1打をおろそかにするな。シード争いも1打、2打で(結果が)変わってくる。優勝がダメなら2位、3位と気持ちを切り替えろ」と言われていた。昨春の開幕戦で、首位発進しながら3位に敗れた際に得た教訓でもある。「1つ抜ければ単独2位になれるな」と5メートルのバーディーパットをねじ込んだ。
「去年は最後まで平常心で自分のゴルフをし続けるのがテーマだった。今年はうまくて強いプロになりたい、と年頭に決めてやっている」(敬称略)
〔日本経済新聞夕刊10月11日掲載〕