調剤ミスか、60代患者死亡 京大病院、高濃度注射薬
京都大病院(京都市左京区)は3日、薬剤師が通常の約700倍の高濃度の注射薬を調剤し、自宅で投与した60代の女性患者が死亡したと発表した。誤って調剤した可能性が高いとしており、稲垣暢也病院長は「このような事態を招き、心よりおわび申し上げる」と謝罪した。
病院によると、薬剤師2人が8月28日、患者が自宅で使用するための注射薬「セレン注製剤」を、医師の処方箋より高濃度で調剤。患者は自宅で点滴後の9月26日夜、背中に痛みを訴え、翌朝に同病院で処置を受けたが、亡くなった。
保管していた注射薬の残りや亡くなった患者の血液を病院が調べると、738倍の濃度の薬が投与されていたことが判明した。また、別の10代の男性患者に8月28日に用意されたセレン注製剤でも、点滴の色が違う異常があったと報告されており、同じミスがあったのではないかとみている。
病院は調査委員会を立ち上げ、京都府警や厚生労働省などに届け出て、死因や原因を調べている。
製剤の既製品はなく、病院がつくった薬を処方している。日本臨床栄養学会によると、セレンは体内に微量に存在し、欠乏すると心筋症などさまざまな症状を引き起こす。一方、過剰だと神経性の障害などが起きる恐れがある。〔共同〕