T―岡田、自分の壁越えて真のリーダーに
今季のT―岡田選手は27本塁打(8月31日現在)と打撃好調で、自身2度目の本塁打王のタイトルも狙える位置にいます。29歳と選手として円熟期に入った彼には、強い発言力でチームを引っ張るリーダーになってもらいたい。過去の自己最高を超える成績を残すことで、さらに意欲的に野球に打ち込むようになり、真のリーダーになる自覚と自信が生まれるでしょう。今年はその最大のチャンスです。
■キャリアハイ塗り替えてこそ
2010年に33本塁打で初のタイトルを獲得したT―岡田選手ですが、以降は30本塁打の壁をなかなか打ち破れずにいました。プロ12年目を迎えた今シーズン、もう一度大台に乗せ、35本塁打ぐらいにまで到達してくれることを彼には強く願っています。自身のキャリアハイを塗り替えることで「ようやく選手として再スタートできる」と気分も一新されることでしょう。そうして生まれた大きな自信をもとに、チームや同僚に対して自らの思うところをどんどんぶつけ、強い発信力を持ってくれるようになることを期待しています。
ゲーム差の開いた4位の現状をなんとか打破しようと、福良淳一監督は勝利を追求してあれこれと策を打っています。8月5日からは9試合連続で、1番にT―岡田選手、2番に同じくスラッガーの吉田正尚選手(24)を据える超攻撃的なオーダーを組みました。
この新打順には、四球を選ぶことも多いT―岡田選手の出塁率の高さを生かし、得点力アップを目指す狙いがあったのだと思います。2番に長打力のある吉田正選手が控えているため、相手バッテリーは簡単には走者を出したくないはずです。ボールが真ん中に集まりやすい傾向となり、甘い球が入ってくればリードオフマンの本塁打も十分に期待できる状況がつくり出せます。
福良監督がこうした重量級の1、2番コンビを組んだのには、現在のチーム事情も関係しているでしょう。2人以外にもロメロ、マレーロの両外国人選手、小谷野栄一選手や中島宏之選手ら走者を返すタイプの打者はそろっている一方、機動力を使えてなおかつ出塁率も高い打者はなかなか台頭していません。こうした現状も踏まえた上で、福良監督は考えられる最善の策として、1番・T―岡田選手を実現させたのだと思います。
今季序盤、助っ人のペゲーロ選手を2番に据えた楽天が好調だったこともあり「2番打者最強説」というものがクローズアップされました。ただ、こうした考えは以前から米大リーグには存在しており、出塁率の高い1番打者の後、2番には引っ張った強い打球を打てる左打者を置くオーダーは米国では実践されていたものです。
首脳陣が試行錯誤して打順をやり繰りする中で、T―岡田選手は今季、2番打者でも起用されました。不慣れな打順も経験したことは、打者としての幅を広げることに役立ちます。打席に立ったときに受ける感覚の違い、相手投手の異なる攻め方を味わったことは、新たな知識となってプラスの方向に働くと信じています。
チームには明るい話題も出てきています。安定した投球を見せてきたドラフト1位ルーキーの山岡泰輔投手(21)が8月26日、強打の西武打線を相手にプロ初の完封勝利を飾りました。ドラフト4位で入団した19歳の高卒ルーキー、山本由伸投手も1軍へ昇格して、8月31日にプロ初勝利を挙げました。大きな武器である150キロ台のストレートに加え、四球を出さない制球力の高さが光ります。常に冷静で落ち着いており、物おじしないという性格的な長所は1軍マウンドに登っても消えておらず、将来はエースの座も狙えると大きな期待を抱いています。
■核となるリーダー欠かせず
育ってきた勢いのある若手と中堅、ベテランを一つにまとめて大きな戦力を形成するためにも、核となるリーダーの存在が不可欠です。生え抜きのT―岡田選手は年齢的に見ても、チームを引っ張っていくのに適任です。文句のつけようがない実績を残すことで自他ともに認めるチームの顔となり、言葉をひと言発すればみんなが同じ方向へ動く、強烈なリーダーシップを発揮するようになってほしいと思っています。
(オリックス・バファローズ2軍監督)