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米企業トランプに反旗 女性CEO乱を呼ぶ

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米国で最高経営責任者(CEO)の乱が起きている。人種差別を容認するような言動をするトランプ大統領に有力企業のトップらが「ノー」を突きつけている。最高権力者である大統領に対する異例の抗議。この流れをつくったのが3人の女性だった。

ついに彼までトランプ氏を批判するようになったのか――。18日、米メディア業界で驚きの声が広がった。米複合メディア企業、21世紀フォックスのジェームズ・マードックCEOが社員に送ったメールに「トランプ大統領の発言は米国人にとって憂慮すべきものだ」と記されていたからだ。

マードックCEOの父親は、トランプ氏を支持してきたメディア王ルパート・マードック氏だ。次男のマードックCEOはその後継者であり、米全国放送ネットで唯一、トランプ氏に擁護的なフォックス・ニュースを統率してきた人物でもある。

良好な関係一変

トランプ氏は、南北戦争で奴隷制存続を主張した南軍の記念碑や将軍像の撤去を非難した。白人至上主義者に理解を示したと受けとめられており「トランプ応援団」のメディアを率いるマードックCEOですら、反旗を翻した。今後、フォックス・ニュースの論調にも影響を与える可能性がある。

「反エスタブリッシュメント(支配階級)」を掲げて昨年の大統領選を制したトランプ氏。本来なら大企業を敵視するはずだが、最重要課題と位置づけてきた雇用創出は大企業の協力なしでは、できない。米国内での投資を促すため、トランプ氏は当選後すぐに経済政策の柱として大規模減税やインフラ投資などを掲げた。

米産業界もトランプ氏の「親ビジネス」の姿勢を好意的に受け止めた。政権の目玉の雇用創出の象徴となった「製造業評議会」と「戦略・政策評議会」の2つの助言機関には、多くのCEOが参加した。

しかし、トランプ氏の人種問題を巡る発言は、良好だった米産業界との関係を一変させ、助言機関を辞任するメンバーが続出した。

そのなかで特に重要な役割を果たした3人の女性CEOがいる。ペプシコのインドラ・ヌーイ氏、IBMのバージニア・ロメッティ氏、ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラ氏だ。

彼女たちが所属していた戦略・政策評議会は、ゼネラル・エレクトリック(GE)の元CEOのジャック・ウェルチ氏など、トランプ支持者も交えた伝統的な米国東海岸の企業のトップを中心に構成されていた。そのため、製造業評議会でCEOたちの辞任が相次いでいるにもかかわらず、戦略・政策評議会では、評議会の継続を求める声があった。

だが、その流れは止まった。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、旧知の3人の女性CEOはコンサルティング会社の幹部を交えて電話会議を開き、戦略・政策評議会を辞任することで意見が一致したという。

こうした動きを受け、評議会のリーダー役のブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマンCEOは、メンバーの電話会議を16日午前11時半に開催した。3人の女性CEOは会議が始まるまで別のメンバーと連絡を取り合い、解散の機運を高めた。その結果、電話会議は解散やむなしの結論に至った。

IBMのロメッティCEOは「この評議会はもはや目的を達することはできない」と舌鋒(ぜっぽう)鋭くトランプ氏を批判した。他の2人の女性CEOもトランプ氏を手厳しく批判している。

依然として男性が幅をきかせている歴史の長い大企業において、彼女たちは激烈な競争の末、トップに上り詰めた。そうした女性トップならではの「差別」の理不尽さに対する鋭敏な感覚がトランプ氏への厳しい態度につながったとみられる。

不買運動の脅威

企業の社会的責任(CSR)を強く求める世論もCEOによる大統領への反乱を引き起こす原因となった。政治への対応を誤ると、ブランド毀損などの経営リスクを招きかねないからだ。

「CEOが助言機関をやめない限り、我が家にはアンダーアーマーの製品を入れない」

「残念なことだが、ナイキに乗り換えざるを得ない」

スポーツ用品大手、アンダーアーマーのケビン・プランクCEOは追い込まれていた。アンダーアーマーはアフリカ系米国人のバスケットプレーヤーやバレリーナなど新進気鋭の人物を広告塔にして、米国内で巨人ナイキに次ぐ地位を築いてきた。それだけに、白人至上主義を容認するかのようなトランプ氏との関係を問いただす消費者からの批判はこたえた。

医薬・生活用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、生活用具大手スリーエム(3M)、大手食品キャンベル・スープなど消費財を扱う企業群は、例外なくツイッターやフェイスブックなどのSNS(交流サイト)を通じた不買運動の脅威にさらされた。製造業評議会でまずメンバーの辞任が相次いだのはこのためだ。

現在の米国企業のCEOはいつの時代にも増して、人種、年齢、国籍、性的少数者(LGBT)などの差別に無頓着では務まらない。

「男女の役割を固定的にとらえる有害な考え方を職場に広めようと内規に違反した」

7日、グーグルのスンダル・ピチャイCEOは「女性は生まれつき技術者に向いていない」など差別的な文書を公開して物議を醸した男性社員を解雇した。その男性社員に対し、大半の従業員は不快感を示しており、社内外に波紋が広がっていたからだ。

ライドシェア大手のウーバーの創業者のトラビス・カラニック氏は、性差別を放置するかのような言動が厳しい批判の的となり、CEOの座を追われた。革新企業ウーバーのブランドイメージは地に落ちている。

トランプ氏は米国の国力の源泉である多様性(ダイバーシティー)の文化を否定するような行動をとってきた。7月26日には、トランスジェンダー(出生時の性と自身の認識する性が一致しない人)の軍隊への入隊を認めないと表明した。

そうした状況だからこそ、多様性の文化を確保し続ける集団である企業の重要性が高まっていると言える。米国社会がCSRの実行力にこれまで以上に厳しい目を注ぐのもこのためだ。

「米国の企業経営者は社会悪に対してリスクを取った」。米ハーバード経営大学院のイーサン・ルーエン助教授は米紙で、辞任の意思を示し評議会を崩壊に追い込んだCEOは、株主に報いる責任も忘れてはならないと指摘する。CEOの反乱は、産業界が期待する経済政策を実行する意欲をトランプ政権から奪いかねないからだ。

「我々の意見を政策に反映させるためにトランプ政権に協力し続ける」(デル・テクノロジーズのマイケル・デルCEO)。政権と協力関係を保つ方が顧客や従業員に得策だと判断するCEOもいた。トランプ離れで背負う責任もCEOにずしりとのしかかる。

「ネオナチ」など、特定の民族や人種への差別をあおるヘイト集団の台頭に、米国のユダヤ系の経営者らが神経をとがらせている。ユダヤ系の人たちに危害が及びかねないからだ。明確にネオナチを批判しなかったトランプ大統領への不信感も高まっている。最高経営責任者(CEO)による大統領への反乱はユダヤ系にも広がっている。

「米国が決定的な転換点を迎えている」。人種問題を巡るトランプ発言に批判が集まるなか、スターバックスのハワード・シュルツ会長は16日、社員向けの会合でこう語りかけた。

4分の1がユダヤ系

ユダヤ人のシュルツ氏にとって、バージニア州で行われた白人至上主義者のデモを報道したテレビ映像は衝撃的だった。ネオナチやクー・クラックス・クラン(KKK)のメンバーがカメラの前でも顔を隠さずに堂々としていたからだ。

トランプ政権の発足と軌を一にするように、反ユダヤの事件が急増している。米ユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(ADL)によると、2017年1~3月期に発生した反ユダヤの事件数は541件と前年同期に比べ86%増となった。「16年の大統領選挙が(事件の)増加に重要な役割を果たしている」(ADL)

選挙戦でトランプ氏は「白人対マイノリティー(少数派)」の対決構図を掲げ、白人から大きな支持を受け当選した。トランプ氏は政権に就いた後も排斥的な移民政策に意欲的で、白人至上主義者などの反ユダヤ感情の拡大を招いている。

ユダヤ系米国人は約600万人とされ、全体の人口に占める割合は2%程度にすぎない。しかし、金融を中心に経済界でユダヤ系は強いネットワーク基盤を持ち、政財界への影響力は強い。

トランプ氏の助言機関だった戦略・政策評議会でも16人のメンバーのうち、投資会社ブラックストーン・グループのスティーブン・シュワルツマンCEOら4人がユダヤ系だった。助言機関の4分の1を占める一大勢力でトランプ氏の有力ブレーン集団でもあった。

ユダヤ系CEOも当初は、ビジネス強化を掲げるトランプ氏と協力関係を築いた。しかし、反ユダヤの事件が増加するなか、ネオナチを容認するかのようなトランプ氏の発言はユダヤ系CEOの許容範囲を超えていた。

「偏見や人種差別主義は一点の曇りもなく批判されなければならない」。投資会社ブラックロックのCEOでユダヤ系のラリー・フィンク氏はこう述べ、助言機関からの辞任を早々に決めた。他のメンバーにも辞任を働きかけたという。

大物投資家も関係を再考

18日には著名投資家のカール・アイカーン氏がトランプ氏の規制緩和の特別顧問からの辞任を表明した。選挙戦序盤からトランプ氏を支持してきたユダヤ系大物投資家もトランプ氏との関係を再考している。

今後、ユダヤ系CEOで動きが注目されるのが、カジノ王の異名を持つラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソンCEOだ。日本ではソフトバンクグループの孫正義社長とトランプ氏との会談をお膳立てした人物として知られる。多額の献金をしたため、トランプ当選の立役者とみなされているが、反ユダヤに対抗する運動に熱心な慈善家としての顔も持つ。

アデルソン氏がスポンサーを務めるロビー団体「共和党ユダヤ人連合」(RJC)は16日「反ユダヤと人種差別を拒否する澄み切った道徳を持ってもらうべくトランプ氏に働きかける」との声明を発表した。アデルソン氏はRJCを通じて、ネオナチやKKKを拒否する政治運動を展開するとみられる。

「KKKがトーチ(たいまつ)を掲げて行進する様子はナチスを思い起こさせる」(米ユダヤ人人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センター)。人種差別主義者が公然と行進し、最高権力者が明確に批判しない状況は、苦難の歴史をユダヤ系の人々に思い出させるのに十分なのだろう。

ユダヤ系CEOは声をあげ始めた。RJC取締役のフレッド・ゼイドマン氏は米政治情報サイト「ポリティコ」にこう語った。「沈黙を続けると何が起こりうるのか我々は知っている」

「トランプ氏のために戦争を始める」

18日、トランプ米大統領の最側近だったバノン首席戦略官・上級顧問はこう言い残してホワイトハウスを去った。

バノン氏は移民排斥や保護貿易など、トランプ氏の「米国第一主義」を支えた人物だ。政権入りする前は、白人至上主義などを訴える「オルトライト(ネット右翼)」のニュースサイト「ブライトバート・ニュース」を運営していた。バノン氏は政権内の穏健派と対立し一敗地にまみれた。

トランプ氏擁護の声も

ニュースサイトに戻った今、バノン氏は復讐(ふくしゅう)に燃えている。攻撃対象には、議会やメディアだけでなく、大企業も含まれる。

白人至上主義者と反対派との衝突事件を巡り、トランプ氏は「双方に非がある」と述べ、人種差別主義者を容認するかのような姿勢を示した。「多様性は米国文化の礎」(ユナイテッド・テクノロジーズのグレッグ・ヘイズ氏)と考える有力企業の最高経営責任者(CEO)たちは、それを問題視し、助言機関の解散にまで発展した。

トランプ氏の発言に対し、誰もがバノン氏の影響を強く感じていた。そのため、混乱を招いた責任を取る格好でバノン氏は辞任した。CEOの反乱がバノン氏退任に一役買ったとも言える。

ところが、一般の米国人はCEOたちほどトランプ発言を問題視していない。むしろ、トランプ氏の発言を擁護する人も多くいる。調査会社モーニング・コンサルタントと政治情報サイト「ポリティコ」が共同で実施した調査がそうした状況を物語っている。

シャーロッツビル(バージニア州)で白人至上主義者と反対派が衝突したことについて尋ねたところ、共和党支持者では「双方に非がある」と答えた人が過半数の54%を占めた。ここから浮かび上がるのは、CEOと保守的な白人層との間における人種や移民を巡る意識の違いだ。

大企業の多くが事業のグローバル化で工場を海外に移転させていった。同時に、米国内に温存した生産拠点では、安い賃金の移民層を受け入れて競争力を高めてきた。

そのあおりを受け、白人の中産階級やブルーカラーの労働者の雇用機会は脅かされた。キリスト教と英語を中核とする文化・価値観も揺らぐとの懸念も広がっていた。

バノン氏がリーダーに

そうした不安を感じる白人層のオピニオンリーダー的な存在にバノン氏がなりそうだ。グローバル展開する企業のCEOがいつバノン氏の標的になってもおかしくない。

「メキシコとの国境の壁は建設する。北米自由貿易協定(NAFTA)もどこかの時点で終わらせることになるだろう」

トランプ氏は22日にアリゾナ州で開催した集会で自身の原点ともいうべき排他的な政策を改めて持ち出し、それを実行することを強調した。

人種問題で政権基盤が揺らぐなか、トランプ氏としては中核の白人労働者の支持を固めておきたいところだ。同時に白人労働者に影響力のあるバノン氏の支持もつなぎ留めておこうとする思惑も見え隠れする。

バノン氏退任で国家経済会議(NEC)委員長のコーン氏らの発言力が高まり、現実的な政策に転換するとの見方もあったが、不透明感が漂う。

「トランプ氏の言動は批判すべきだが、評議会は続けるべきだ」

16日午前、トランプ氏の助言機関「戦略・政策評議会」の電話会議でメンバーの多くが辞任や解散を主張した中、あえて評議会の存在を主張した人物がいた。ボーイングの前CEO、ジェームス・マックナーニ氏だ。マックナーニ氏はトランプ政権が「親ビジネス」であり続ける重要性を強調したという。

しかし、助言機関は解散した。インフラ投資の会議の設立も撤回されるなど、トランプ氏の産業界離れも進みかねない。

米国を代表する企業のCEOが集団で大統領から離反するという異例の事態を迎えた米産業界。「トランプ・バノン」のコンビが続けば、政権との関係修復が困難になるのは間違いない。

(ニューヨーク=稲井創一)

[日経産業新聞 8月23、24、25日付]

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