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新国立で過労自殺、時間外200時間を会社「把握せず」

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日経コンストラクション

新国立競技場の地盤改良工事で施工管理をしていた23歳の新入社員の男性が2017年3月に過労自殺した問題で、男性が所属していた建設会社は17年7月21日、日経コンストラクションの取材に対して管理体制に不備があったことを認めた。男性が自殺する直前1カ月の時間外労働は200時間を超えていたが、会社は把握していなかった。

自殺した男性は、16年3月に大学を卒業し、地盤改良工事などを得意とする建設会社に入社。新人社員研修の後におよそ10件の現場で経験を積み、16年12月から東京五輪などに向けて建設中の新国立競技場の現場に配属となった。

男性が担当していたのは、新国立競技場の敷地内における深層混合処理工法による地盤改良工事。新国立競技場の一連の建設工事は日本スポーツ振興センターが発注して、大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所JVが受注。男性の所属する建設会社は、一次下請け会社として施工を担っていた。

男性は17年3月、「今日は欠勤する」と会社に連絡した後、突然失踪。4月に長野県内で遺体が発見された。自殺とみられる。「突然このような形をとってしまい、もうしわけございません。身も心も限界な私はこのような結果しか思い浮かびませんでした」と記されたメモも見つかった。

遺族の代理人である川人博弁護士によると、自殺が発覚した当初、会社は男性の時間外労働が80時間以内だったと説明していた。しかし、遺族側が再調査を要求したところ、男性の時間外労働は今年1月に116時間、2月に193時間まで達していたと訂正した。

男性が使用していたパソコンの電源をオン・オフした記録などから遺族らが割り出した労働時間はこれをさらに上回る。深夜までの労働が常態化しており、17年2月中に3回の徹夜勤務があったことも明らかになった。

この建設会社の労使間で定めた「36(サブロク)協定」によると、1カ月当たりで認められた時間外労働は原則が45時間、特別な場合でも80時間だった。川人弁護士は「36協定の規定を大きく超える違法残業であったことは間違いない」と指摘。遺族は7月12日、過重労働によって精神障害を発病したとして、労働基準監督署に労災を申請した。

深層混合処理工法は地盤改良の一般的な工法で、男性の会社でも実績があった。男性の業務内容は現場の写真撮影や品質・安全管理のほか、事務所での作業日誌作成や管理記録の記入など。会社は「新入社員が担当できる業務の範囲内だった」としている。

とはいえ、新国立競技場の工事はデザインや建設費をめぐる混乱などで着工が遅れ、19年11月の竣工を目指して厳しい工程管理が求められている。男性の会社は「地盤改良工事自体の工期は17年6月30日で、10日遅れの7月10日に完工した」としている。

男性が所属していた建設会社は、男性の残業時間が急増した17年2月に現場に導入する重機の台数が増え、工事が繁忙期を迎えていたと説明している。遺族の証言では、男性は1月終わりごろに「重機が予定通りそろわず、工事が遅れている」と話していたという。遺族らは、工程の遅れを取り戻すために2月が極端に忙しくなったとみている。

新入社員である男性の過剰な負荷に、周囲は気付くことができなかったのか。

日経コンストラクションの取材によると、自殺した男性はこの会社にとって16年度に入社した唯一の新入社員だった。「新卒の採用活動が難航し、結果的に入社したのは彼1人になってしまった」と会社の担当者は説明する。

この会社は新国立競技場の現場を計5人で担当していた。自殺した男性を含め、中堅の社員を筆頭とするチームだ。

会社唯一の新入社員だった男性には、「同期」と呼べる存在がいなかったことを意味する。「相談や愚痴をこぼす相手がいなかったとすれば、本当にかわいそうなことをした」と会社の担当者は悔やむ。

男性はOJT(職場内訓練)期間中だったが、特定の指導役はいなかった。チームに入社3年以内の年齢が近い先輩社員がいたものの、先輩社員自身も多忙で余裕がない状況だったとみられる。

川人弁護士によると、男性は自殺する直前の2月、友人に「今の職場に3年はいたいが、もたない。辞めたい」と話していた。

過酷な労働環境が若手技術者の将来を奪う例は少なくない。建設現場の労働時間は、全国平均で健康障害に直結する「過労死ライン」に近い水準にある。建設業に従事する労働者が精神障害を発症し、労災が認定された件数は16年度に過去最多を記録した。

36協定で定める時間外労働時間は、原則月45時間以内かつ年360時間以内とする上限規制がある。しかし、現状は建設業と運輸業は適用外となっている。業務の特性上、一定の長時間労働が避けられないと考えられてきたからだ。

一方、川人弁護士は建設業が時間外労働の上限規制が適用外となっている状況を「極めて危険」と指摘する。政府は17年3月に「働き方改革実行計画」の中で、長時間労働を罰則付きで規制すると表明。建設業も時間外労働の上限規制を適用する方針だ。しかし、適用までには5年の猶予を設けており、その間にも東京五輪に向けて本格化する工事の現場などで、違法な長時間労働が横行する懸念がある。

男性の自殺を受け、再発防止に国も立ち上がる。塩崎恭久厚生労働相は7月21日、新国立競技場の建設現場の働き方の実態を調査する考えを示した。厚生労働省と国土交通省が連携し、労働時間の短縮に本腰を入れる見通しだ。 

※男性が所属していた建設会社名は、遺族の希望により伏せました。

(日経コンストラクション 長谷川瑤子)

[日経コンストラクションWeb版 2017年7月24日掲載]

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