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樋口広太郎(28)オペラ好きは中学以来

新国立劇場運営に夢託す

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オペラ漬け 中学時代に習い虜に 新国立劇場の理事長就任

私は年間50回以上、オペラ、バレエ、演劇を楽しみに劇場に足を運びます。1999年7月には、東京・初台にある新国立劇場運営財団の理事長になりました。新国立劇場は国内初の本格的なオペラハウスです。理事長は財務も人事も一手に握るので、かなりの権限を持っています。しかしオペラ好きとはいえ、本格的なオペラハウスの経営に参画したことは当然ありません。副理事長をはじめレベルの高いスタッフがそろっているので心強いのですが、いままでとは勝手が違うので数段神経をつかいます。

これも他の仕事と同様、突然回ってきました。文化庁長官から数回にわたって「ぜひやってください」と依頼を受けました。「適任ではないですよ」と辞退したのですが、文化庁長官の諮問機関の文化政策推進会議の会長を務めさせていただいていることもあり、結局は引き受けてしまいました。

97年にオープンした新国立劇場は、約800億円を投じて建設されました。約1800席の専用オペラ劇場と、演劇や舞踊に使う中劇場、小劇場を備えています。オペラ関係者待望の劇場として注目を浴びましたが、運営方法、採算性などをめぐって注文があちらこちらから寄せられました。

私は名誉職として名前だけ貸しているわけではありません。運営財団の理事長職は人事、財務全般に目を通さなければなりません。何から何まで振りかかってくるわけですが、私はまずクレーム処理係に重点をおいてやりました。マスコミやお客さん、ファンの方々の声を極力聞くように努めてきたつもりです。当初、マスコミは厳しい目を向けていましたし、各方面からいろいろと多岐にわたる注意を受けました。クレームの中にこそ、様々なヒントがあるという点では、劇場経営も変わりません。

私の音楽好きは中学時代からです。中学に当たる京都市立第二商業で音楽を指導してくださった中川牧三先生との出会いが大きかったですね。実は新国立劇場のオペラ部門の芸術監督である五十嵐喜芳さんも中川先生の教え子で、私にとっては事実上、弟弟子に当たります。もっとも彼は高名な声楽家になりましたが、私は中学で下手な金管楽器を吹いていただけです。口の悪い友人からは「ホラ」を吹いていたんだろうと冷やかされる始末です。

京都二商に入学した当初は、柔道部に入っていましたが、体の大きな生徒にだんだん歯が立たなくなりました。私はいつも投げ飛ばされて、家に帰るとうなっているので、父が見かねて柔道の先生に勝手に退部を申し出たのです。私は面子が丸つぶれだと文句を言いましたが、結局、すっぱり諦めて、音楽部に変わりました。

途中から入ったので、メロディーを吹く花形楽器のトランペットやクラリネットなどのパートはすでに決まっていて、伴奏楽器しか残っていませんでした。このため卒業まで大きさだけは一番のチューバを吹いていました。これは重いばかりで、ブーッ、ブーッと鳴らすだけです。しかし新聞社主催の全国旧制中学の吹奏楽コンクールで優勝しましたから、部の水準はかなりのものでした。

その音楽部の先生が、イタリア留学から帰られた若きテノール歌手の中川先生だったのです。先生はロッシーニの「セビリアの理髪師」やビゼーの「アルルの女」、ベルディーの「リゴレット」などを特別に教えてくださいました。オペラを初めて知ったわけです。しかし戦時中ですから、「軍艦マーチ」や「日の丸行進曲」など以外はダメだと言われていました。このため練習は窓を締め切ってやったものです。

中川先生は「必ずオペラなどが聞ける時代が来る。音楽の世界はものすごく広いから、よく覚えておきなさい」と世の中の風潮に流されず教えてくれたのです。お陰でクラシック音楽の真髄に触れられたので、オペラが一生の趣味になりました。若い時に覚えたものは忘れないものです。当時習った曲は全部暗譜しています。しかし、音感には正直なところ自信がありません。いま、教会で賛美歌を歌うと、残念ながら隣で家内がクスクス笑うほど音程が外れます。

でも無類の音楽好きであることは間違いありません。住友銀行の役員時代、長めの休みにオーストリアのザルツブルクの音楽祭やウィーンの国立オペラを連日連夜鑑賞して、すっかりオペラの虜(とりこ)になりました。あの朗々とした声量あふれる歌声に壮麗な舞台、思わず引き込まれるドラマと、魅力がいくつもそろっています。最近も海外に毎年のようにオペラ漬けになるために出かけます。

オペラを通じて、世界的なテノール歌手のプラシド・ドミンゴさんやソプラノ歌手のグルベローバさんと知り合う幸運にも恵まれました。彼らの実力はいまさら言うまでもありませんが、ファンを心から大切にする誠実な人間性にほれ込んでいます。

私はいまも世界のオペラハウスを見て回り、関係者の方々の話に耳を傾け、良い点を取り入れるように努めています。新国立劇場を名実ともに世界に引けを取らない劇場にすることに情熱を燃やしています。音楽についても夢は尽きません。

 この連載は、2001年1月に日本経済新聞に連載した「私の履歴書」および新聞連載に加筆して出版された本「樋口廣太郎 わが経営と人生 ―私の履歴書―」を再掲したものです。2013年、日経Bizアカデミーで公開した記事を再構成しました。

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