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浅田真央の幸せな引退と元アスリートのその後

編集委員 北川和徳

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国民的ヒロインともいえるフィギュアスケーター、浅田真央さん(26)が引退した。笑顔を交え、メモを見ることもなく、「?」と感じる質問にも言葉を選んで自分の気持ちを誠実に率直に伝えようとする引退記者会見には脱帽した。最近よく見る建前ばかりの薄っぺらな会見と比べて、文句のつけようがない。スケートに打ち込む人生を送りながら、本当に立派で素敵な大人に育ったものだとうれしくなった。

前向きに次のステージへ

そんな姿を見て、12年前に14歳の彼女にインタビューしたことを思い出した。ジュニア世界女王となりシニアの全日本選手権で2位となった2004~05年のシーズンが終わった頃。フィギュア人気は今のように高まってはいなかったが、難しいジャンプをミスなくこなし、トリプルアクセルを軽々と跳ぶ彼女は天才少女として注目されていた。前年暮れの全日本の時からかなり背が高くなった印象の彼女に身長を尋ねると「全日本から4センチ伸びて160センチになったんです」。急成長の途上、世界のトップに向けて飛躍する直前だった。

「背が伸びてもジャンプに影響はないです」「来シーズンはトリプルアクセル2回に4回転も跳びまーす」。天才少女というより子供のように無邪気にはしゃぐように話す姿からは、アスリートとしての順風満帆な未来を予感した。翌年のトリノ五輪の舞台は年齢制限で立てなかったが、10年のバンクーバーでは金メダル、その4年後の連覇もいけるなと思った。

トリノ後にスケートの取材から離れたが、実際の彼女のアスリート人生はインタビュー時にこちらが勝手に思い描いた単純なストーリーとは異なった。世界選手権を3度、グランプリファイナルは4度の優勝。トップスケーターとして申し分ない結果を残しながら、五輪では勝てなかった。14歳の頃と同じ天真爛漫(らんまん)さはそのままに、求道者のような悲壮感も身にまとっていった。ソチ五輪のフリーの演技を終えた後の喜怒哀楽すべての感情がこもった表情と涙は忘れられない。連戦連勝の無敵の女王だったら、これほど人々の心を動かすことはなかっただろう。

アスリートが目指すものはメダルや順位だけではない。何度もそう書いてきた。だが、頭では分かっていても、理屈を超えてそれを実感できることは自分でも意外に少ない。ソチのフリーの演技が象徴的だが、彼女はそれを自らのパフォーマンスによって分からせてくれる希少な存在だった。

幸せなアスリートだとあらためて思う。彼女が引退を伝える会見やブログで残した言葉から、特に素晴らしいと感じたのは、引退の決断を「人生の中の1つの通過点」とはっきりとらえ、「フィギュアスケートでやり残したことは何もない」「この先も新たな夢や目標を見つけて、笑顔を忘れずに、前進していきたい」と、自身の次のステージの幕開けを前向きに予感していることだ。時間をかけて自問自答を繰り返し、納得して出した結論だということもよく伝わってきた。

フィギュアスケートは競技生活を終えてもアイスショーで表現者として活躍できる。その点では恵まれている。しかも、引退発表後のメディアの大騒ぎを見れば、彼女は今の日本で最も商品価値の高いタレントといえるだろう。アイスショーだけでなくテレビでもCMでも引っ張りだこになる。引退後のキャリアに何の心配もない。ただ、そんなことは別にして、アスリートがセカンドキャリアに臨むとき、最も大切なことは競技生活ときちんと決別することだという。

浅田さんが引退を表明した翌日、アスリートのセカンドキャリアを考えるセミナーに顔を出した。アスリートのキャリア支援事業を展開する山愛(本社・東京)やパソナ(同)の担当者や元アスリートたちが登壇し、現状や課題を説明してくれた。

実際には浅田さんのように「悔いはない」と心から言い切って引退できるアスリートなどほとんどいない。突然の戦力外通告や契約の打ち切り。競技生活をまっとうできなくなって引退に追い込まれる。たくさんの転職希望アスリートの相談を受けている山愛の藤井頼子氏は、まず夢を絶たれた喪失感を癒やし、それから次のステップに進むためのキャリアトランジションへのケアが重要で、そこをクリアして初めて就職に向けてのサポートに入れるのだという。

パソナでアスリートサポート業務を担当する菊池康平氏は、浅田さんの会見を見て「スケートをやりきったので生まれ変わったらスケート以外のことをやりたい、と言えるのはすごいです」とメールをくれた。

引退後を意識して

20年五輪・パラリンピックに向けてスポーツ界は景気のいい話題があふれているが、アスリートのセカンドキャリアに関しては深刻さが増している。プロ野球だけでなく、今やJリーグは3部まで拡大。バスケットボールのBリーグもスタートした。プロ選手は増える一方だ。多くは無名で、引退すれば広告価値などない元スポーツ選手。プロ化が進むということは、引退後に所属企業に残る道がなくなるということでもある。

では、元アスリートであるということは、転職に関して不利なのか。スポーツだけをやってきたアスリートは、狭い世界しか知らない、基礎的な知識が不足している、などという見方も根強い。あくまで私見だが、それはどんな分野でも共通する問題ではないかと思う。スポーツに限らず、勉強ばかり、芸術ばかり、遊んでばかり、といった偏りが、狭い世界の常識にとらわれることにつながることは否定できない。

一方で、スポーツに打ち込むことで、コミュニケーションやセルフコントロール、課題への処理対応などの各能力を鍛えることができるという。浅田さんの会見を見て、あらためてその価値を実感した。正直なところ、14歳の頃の彼女が、こんな立派な対応のできる大人に成長するとは想像できなかった。もちろん、彼女の競技生活との向き合い方は、普通の元アスリートと比較できるものではないのだが……。

取材をしていると、一般的に豊富な海外経験を持つアスリートほど、柔軟な思考を持ち、視野の広い考え方ができる傾向があると感じる。セミナーでは元アスリートから「日本ではグラウンドやコートで競技以外のことを考えるなという指導が当たり前になっている」という意見が相次いだ。バスケットボール女子の元日本代表、中川聴乃氏は「引退後を考えると、競技の枠を超えて人と交流して幅広い視野を持つことが大切です」と訴える。ただ、日本のチームスポーツではそうした行動が指導者から非難される現実もあるという。

アスリートのセカンドキャリアに関しては、スポーツ庁や日本スポーツ振興センター(JSC)、日本オリンピック委員会(JOC)なども重要な課題として、さまざまな取り組みを展開している。

ただ、最も大切なのは日本のスポーツ界の現場の意識や考え方が変わることなのだと思う。

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