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複合型スタジアムへどんどん膨らむ「妄想」

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今、私が没頭していることの一つに、付帯施設を備えた複合型スマートスタジアムの今治市(愛媛県)での建設計画がある。少子高齢化や人口減社会など、何かと暗い話題に縁取られがちな地方都市の未来を明るく照らすものとして、スポーツを街づくり全体の軸に据えたらどうか、その活動の拠点に、いまだかつて日本にはなかった複合型スタジアムを持ってきたらどうか。そんな大望を実現させるための方途を必死になって探している。

私がオーナーを務めるFC今治は今シーズン、日本フットボールリーグ(JFL)を戦っている。全国規模のサッカーリーグとしてJFLはJリーグ1部(J1)、2部(J2)、3部(J3)の下に位置する"4部"ということになる。3月5日に開幕し、26日のファーストステージ第4節終了時点で16チーム中13位(勝ち点3、3分け1敗)というのがFC今治の現在のポジションだ。

夢スタ足場にさらなる計画

成績についてはそれほど心配していない。高司裕也ゼネラルマネジャーや吉武博文監督ら強化スタッフにとっては初めて経験する全国リーグ。昨季まで戦っていた四国リーグとは勝手が違うことも多い。外国人選手を含めて戦力の入れ替えもあった。今はいろいろな問題に直面しながら、体験し吸収し試行錯誤してチームづくりを進めている段階。4試合をしていまだ未勝利といってもサッカーの中身自体は悪くないし、苦労は必ず報われるときが来ると思って、今は静かに見守っている。1年でJ3に昇格という目標はいささかも揺らいではいない。

それはさておき、JR今治駅から5キロほどの丘陵地帯に現在建設中の「ありがとうサービス・夢スタジアム(通称夢スタ)」は8月20日に完成予定だ。こけら落としの試合は9月10日のJFL、ヴェルスパ大分戦になる。これまでホームとして使ってきた桜井海浜ふれあい広場と違って、夢スタはJ3仕様に合致した収容人数5千人のサッカー専用競技場である。

この夢スタを足場に、さらに大きな計画を温めている。夢スタのある「高橋ふれあいの丘」という丘陵地帯は、もともと今治新都市構想のために用意された土地で、すぐ近くには16面のテニスコートを備えたスポーツパークや「イオンモール今治新都市」が既にある。それらに隣接した土地に1万5千人収容の複合型スタジアムをつくる計画を私が勝手に妄想している。

将来、FC今治がJ2やJ1で戦うことになったら、リーグが要求する条件に合致したスタジアムが必要になる。J2やJ1で戦う力はあるのに、スタジアムが要件を満たしていないので昇格できないという事態を避けるには今から手を打っておかないといけない。

追い風も吹いている。日本政府は昨年6月の閣議決定で「日本再興戦略2016」と題し、スポーツの成長産業化を官民戦略プロジェクトの一つに位置づけた。スポーツの市場規模を2020年に10.9兆円、25年には15.2兆円と、現在の2倍、3倍に拡大させる考えを持っている。そのためには、スポーツをコストセンター(公的資金中心の負担の対象)からプロフィットセンター(官民協働による収益を生み出す対象)に変えていかなければならない、ともしている。

そういう大きなうねりの中で、16年度(平成28年度)の政府の補正予算で「観光資源等を活用した地域高度化計画の策定等支援事業(魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに関する計画策定等事業)」という項目が立てられた。その事業の委託先として経済産業省が選んだ中にデロイトトーマツコンサルティング(東京・千代田)があり、同社とFC今治は今治市をはじめ、複合型スマートスタジアムの実現に向けて協力してくれる企業、教育機関、医療機関、金融機関とで構成する協議会を立ち上げた。これまでに2回の合宿を行うなど、計画を推進するための体制づくりや議論を深めてきた。

我々の計画の強みは複合型スタジアムを建てたいと思っている土地が、いわゆる「公園」ではないことだ。日本のあちこちにある多くのスタジアムは運動公園の中につくるために「公園法」に引っかかり、制約だらけの建物になってしまう。日本中、どこに行ってもスタジアムのつくり、取り巻く環境が似通っているのは公園法に縛られて「金太郎あめ」みたいになってしまうからだ。

それに比べたら、こちらの予定地はまったくのフリー。おかげでどんどん私の「妄想」も「こんなことがしたい」「あんなこともできるのではないか」と膨らんでしまう。

資金集めと集客という難問

難問は資金集めと集客だ。後者でいえば、人口16万人の今治市で毎試合、1万5千人のスタジアムを満員にできるのかどうか。東予の四国中央市、新居浜市、西条市を巻き込んでも人口は50万人弱程度。瀬戸内海を挟んで対岸の尾道市や三原市からも見にきてもらうくらいの戦略を立てないとコンスタントに満員にできないのではないかと心配している。

そのためにはチームが強いだけではダメで、イタリアの強豪ユベントスのように、スタジアムそのものに足を運びたくなる魅力を持たせる必要を感じている。ユベントスはただの陸上競技場からショッピングモールを併設した複合型のサッカー専用スタジアムに変えてから急激に集客と売り上げを伸ばした。100マイル(約160キロ)離れた遠来のお客さんの比率が10%から55%に急増したのは、試合を見るためだけの空間から試合の前後もスタジアム周辺にとどまり、家族や友人や仲間と半日ほど過ごせる空間につくり変えた効果だったとされる。

では、我々が目指す複合型のスタジアムはどんな価値を伴ったものなのか。協議会にはイオン関係者もいて、既にあるモールとうまく連携させるのは当然のこととして議論している。私にはさらに、試合のない日はスタジアムが閑散としているのは当たり前という日本の常識に挑戦したい気持ちがある。そのためにはスタジアムを「スポーツ」や「健康」をテーマに交流人口を増やす拠点にしたらどうかと思っている。

例えば、スタジアムの建屋に大学病院の診療所が入る。別の階にはトレーニングセンターやデータセンターや宿泊施設も設置。FC今治のスポンサーであるLDHと共同でエグザイルのダンス教室も開校する。どれもこれもまだ妄想の域を出ないのだが。

個人の健康状態をウエラブル端末でチェックする時代は既にきている。「朝食はこんなものを食べました」「昼食はこう」と申告すると「夜はこういうメニューにしてください」「食後にこういう運動をしてください」というアドバイスが端末を通じて送られてくる。そういう日々の自己管理とは別に、年に数回は湯治と、しまなみ海道のサイクリングやサッカー観戦などをセットにした健康診断をスタジアム内の医療施設で受けてもらう。そうやって絶えず人が出入りする場所にスタジアムをつくりこんでいく。

もちろん、サッカーの強さも大事。FC今治がJリーグでしっかり戦えるようになり、代表選手も出せるようになれば、日本だけでなくてアジア各地から指導者が今治のメソッドを学びにくる。選手も今治のユースでプレーしたいという子が全国から集まってくるかもしれない。ジュニアユースやユースの大会を開いて参加選手のホームステイ先に地元のおじいちゃんやおばあちゃんになってもらうようなこともできるかもしれない。

そういう交流の拠点に常にスタジアムがある。そういう街づくりが実現できたら「人口は少ないけれど妙に活気があるな」「妙に人の出入りが活発だな」と驚かれるような、にぎわいのある場所に変えていけるかもしれない。若者に「ここで暮らしてもいいかも」と思わせるような場所にできるかもしれない。

風呂敷を広げるほど大変なのは資金調達。昔のように公的資金をどかんと入れてハコモノをつくれる時代ではない。計画の主体をどうするか、というのも悩ましい問題で、スポーツ振興くじ(toto)からの助成を受けるには株式会社ではダメらしい。助成を受けるためにスタジアム建設のためのNPOを組織することはできるが、NPOにすると今度は企業などから投資を受けて利益を還元することができなくなってしまう。あちらを立てればこちらが立たず、というか。

それで今は両方の「いいとこどり」ができないか、と考えている。メインスタンドとピッチはNPOを組織してtotoの助成金や寄付金の受け皿にして建設し、他の部分は企業などの投資を元手に建設するというような。

少しでも自分たちの足で立って…

資金集めは大変ではあるけれど、同時に楽しさとか喜びを感じる部分もある。映画づくりなどでクラウドファンディングの手法が採り入れられるようになったように、作り手の情熱と、つくるものに意義や価値を認めてくれる人がいれば、広範に出資者を募れる時代でもある。必死になってとんがったアイデアを出して実現可能な事業計画を練って世の中に示せば、そういうチャレンジに賛同してくれるところがあるのではないか。

東京オリンピック・パラリンピックも近づき、いろいろな場所でいろいろな省庁の官僚や政治家の人と話すことが増えたが、ある人が「岡田さんがやろうとしていることは公共そのものですね。公共とは政治や役所がやること、という概念を変える必要があるのかもしれませんね」といわれたことがある。

目指すところが認められているような気がする一方で、私は逆に日本のスポーツ界には「お金のことは口にするな」みたいな雰囲気が昔から連綿とあって、いまだにスポーツとビジネスを絡めて話すことに抵抗があるのを何とかする必要の方を感じてしまう。20年東京五輪の施設整備費を巡るごたごたも「オリンピックなんだから、いくらかかってもいいから公的資金を使って、施設をつくってくれて当たり前だろう」というようなスポーツ界の甘えの方をどうしても感じてしまうのだ。

剣道のように精神世界を充実させて自分を黙々と鍛えることは、それはそれで素晴らしいことだと思うけれど、スポーツならではの感動や夢のある世界を広範囲に届けたり、伝えたり、それにふさわしい舞台をしつらえようとしたりしら、おカネがかかるのは絶対に避けられないこと。そのおカネは口を開けて待っていても誰も持ってきてくれないことに、日本のスポーツ界もいい加減に気づいた方がいいのではないだろうか。

私自身は、政府が掲げた600兆円という国内総生産(GDP)達成のためにスポーツを産業化しなければ、と思っているわけではない。目的はあくまでも強いサッカークラブをつくり、クラブの理念に沿ってスポーツを通じて人づくり、街づくりに貢献することである。それを誰かにおんぶに抱っこでやるのではなくて、少しでも自分たちの足で立ってやれるようにしたいのである。

(FC今治オーナー、サッカー元日本代表監督)

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