「ムーアの法則、いまだ健在」米インテルが主張
あらゆる電子機器に組み込まれている半導体の進化はなお続いており、当社は依然として半導体製造技術のリーダーだ――。半導体最大手の米インテルはこう強調した。
「半導体の集積度は2年で倍増」の法則
インテルは「ムーアの法則(同社のゴードン・ムーア名誉会長が1965年に予測した、半導体の集積度は2年で倍増するという法則)」に沿って事業を営んでいる。同社のステイシー・スミス上級副社長はサンフランシスコで開催されたイベントで、回路線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートル(nm)の製造プロセスへの移行を発表。ムーアの法則は順調だと強調した。
スミス氏は「当社のトランジスタ1個あたりの製造コストはこれまでよりもやや速いペースで下がっている」と表明。「ムーアの法則は健在だ。当社はさらに大きなステップに踏み出しつつあり、業界を3年リードしている」と語った。
半導体業界はこの数十年間、ムーアの法則と共に歩んできた。この進化により、かつては1部屋全体分のコンピューターを駆使していた演算能力が、スマートフォン(スマホ)1台で可能になった。あらゆる産業が半導体産業と同じような進歩を遂げていたら、1ガロンのガソリンで太陽まで行き、1平方キロメートルの土地で世界の全人口を養い、光の速さの300倍で移動できただろう、とスミス氏は話す。
米半導体大手クアルコムは先に、韓国サムスン電子が生み出した10nmのプロセスを新製品「スナップドラゴン835」に採用することを明らかにした。だが、インテルは自社こそが世界最先端の半導体製造技術を持ち、競合他社よりも1世代先を進んでいると固く信じている。
1nmには結晶格子にシリコン原子を4個しか配置できない。10nmのプロセスでは、回路は10nmしか離れていない。ちなみに、ウイルスの大きさは約100nmだ。
生産・業務・販売部門の上級副社長であるスミス氏は記者会見で、インテルはリードを奪われてはいないと強調。ライバルによる新たな10nmの製造プロセスは、インテルが3年前に導入した14nmのプロセスと同水準だと一蹴した。
インテルでシニアフェローを務めるマーク・ボーア氏もこのイベントで、ライバルが10nmのチップに搭載できるトランジスタの集積度は、インテルの14nmの集積度と同じだとの見方を示した。インテルは年内に「正真正銘の」10nmチップ発売を計画している。これはつまり、インテルの製造コストは常に30%低いという意味になる。
ボーア氏は「各社は好きなノード名をつけられる。ノード名の意味が失われているという点では、われわれも同意できる」と皮肉った。
半導体工場を新設するには約100億ドルの費用がかかる。工場に設備を備えるにはさらに約70億ドルが必要だ。インテルがこの5年間で製造施設に投じた額は500億ドルに上る。
スミス氏によると、10年前には最先端の半導体工場を保有する企業は18社あった。今ではインテル、米グローバルファウンドリーズ、サムスン電子、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の4社しかない。
グローバルファウンドリーズの幹部であるアラン・マトリシー氏は声明で「当社に続き、他社も低電力の22nmプロセッサを採用していることをうれしく思う。当社は2年近く前、無線やバッテリー駆動のインテリジェントシステム向けに22nmのFD-SOIプロセス「22FDX」を導入した。プレーナ型やFinFETではなくFD-SOIを選んだのは、性能、パワー、利用分野が総合的に最も優れているからだ。当社のプロセスは生産に適しており、顧客からの引き合いも強い。モバイルやすべてのモノがネットにつながる『IoT』、自動車など急成長している分野で50社以上から積極的な働きかけがある」と述べた。
インテルは世界全体に10万人の社員を抱える。米国では5万人が働き、製造部門の社員は3万人に上る。2011~15年の米国での投資額は70億ドルで、米国内総生産(GDP)に年900億ドル貢献している。
By Dean Takahashi
(最新テクノロジーを扱う米国のオンラインメディア「ベンチャービート」から転載)