ボクシング・久保、来月世界初挑戦 情熱は消えず
大学時代に一度はボクシングから離れた男が、プロ12戦目で初の世界戦にたどり着いた。世界ボクシング協会(WBA)スーパーバンタム級タイトルマッチ(4月9日、エディオンアリーナ大阪)で、王者ネオマール・セルメニョ(ベネズエラ)に挑む同級8位の久保隼(真正)だ。
京都市出身の26歳が、中学2年から始めたボクシングをやめたのは東洋大3年の冬。日本歴代2位の12連続防衛中の世界王者、山中慎介(帝拳)や、2012年ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(同)らを輩出した母校の南京都高校(現・京都広学館高)ボクシング部監督の後継者の打診を受けた。ただ、久保には目立った実績がなく、「最初はやる気満々だったけど、偉大な先輩もいっぱいいるし、名門校の跡継ぎは自分には無理だなと」。重圧に耐え切れなくなり、グローブを置いた。
やる気が起きず、生活は乱れた。冬の公園で1週間寝泊まりしたことも。スーツを買っても就職活動は一度もしなかった。競技から離れて気づいたのは「自分にはボクシングしかできない」ということ。復帰への思いが募るなか、真正ジム(神戸市)の山下正人会長から熱心に誘われ、ミット打ちの練習にも付き合ってもらい、覚悟を決めた。「この人の下でもう一回頑張れると思った」と1年ぶりにリングに戻った。
ボクシングに人生の全てをささげてきた。「趣味は全くないし、テレビは一切見ない。遊びにも行かない。お金は必要最低限あればいらないと思っているし、使うこともない」。挫折を乗り越え、大舞台を前に胸に去来するのは、支えてくれた周囲への思い。「会長、ジム、応援してくれる皆さんへの感謝の気持ちとして、ベルトを取りたい」
(金子英介)