トピックス 誰もが抑え 侍の挑戦 守護神不在、完璧求めず
日本の抑えは誰なのか。九回に追いつかれた12日のオランダ戦を、逃げ切り失敗とみれば不安になるが、小久保監督ら首脳陣には抑えは指名せず、という暗黙の了解があるらしい。「抑え変動制」の真意とは……。
オランダ戦、6-5の九回にマウンドに上がったのは、抑えの有力候補だった牧田(西武)ではなく則本(楽天)だった。2死までこぎつけたものの、四球の走者を返されて追いつかれた。
起用の理由を問われた小久保監督は「今日は則本と決めていた」と一言。今後も1人に決めて九回のマウンドを託すのでなく、秋吉(ヤクルト)らを含む複数の投手を、状況をにらみつつ起用するもようだ。
投手の台所を預かる権藤コーチは「抑えが現代野球で最重要の役目」としている。そんな「抑えファースト」のコーチがなぜ? 変動制への疑問は膨らむが、そこには責任が重いからこそ、1人にかぶせないという配慮があるようだ。
権藤氏は吉井理人さん(現日本ハムコーチ)ら、数々の抑えを育てた。最初はあえて指名せず、九回の起用をさりげなく増やし、定着させるという手法をとった。「抑えと明言すると重圧でつぶれるから」だそう。
昨季は各球団を見渡しても絶対といえるストッパーがおらず、代表チームも抑え不在が想定された。決勝ラウンドになれば、2009年大会決勝でダルビッシュ有(現レンジャーズ)が抑えを務めたように、両輪である大谷(日本ハム)か菅野(巨人)の一方を抑えに回す構想もあった。しかし、それもご破算に。
大谷辞退の時点で、抑えは決めず、全員束になってかかるという方針は決定的になった。
09年のダルビッシュも九回に1点差を追いつかれた。当代一の投手でも、大舞台での逃げ切りは難しい。勝ち越し、サヨナラさえ食わなければ御の字で、オランダ戦の則本も、よく持ちこたえたといえる。
誰にも完璧を求めず、同点まではOKという構えで、思い切り腕を振ってもらうのが首脳陣の狙いだ。不定形が今代表の継投の形。次は誰かとドキドキしながら、投手のコールを待つしかない。
(篠山正幸)