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カネボウ高岡監督が語る 日本マラソン低迷の理由

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日本のお家芸だったマラソンの低迷が続く。男子マラソンの日本記録はカネボウの高岡寿成監督が2002年につくった2時間6分16秒が14年以上も破られていない。その高岡監督に日本のマラソンの問題点とマラソンの本質について語ってもらった。

――高岡さんが2002年に出した日本記録がまだ破られていません。こんなことを想像していましたか。

「まさか、こんなことになるとは」

――日本のマラソンは世界に大きく後れをとっています。東京五輪まで3年となったいま、日本の選手についてどう感じていますか。

「日ごろ、メダル獲得をしっかり意識しているのかどうかが気になる。最終目標を五輪や世界選手権のメダルに置いて練習に取り組んでいるかどうかが結果に影響する」

「世界記録が2時間2分台に突入してしまい、世界が自分の手の届くところにあるとは思えなくなってしまっている選手もいるでしょう。箱根駅伝がこれだけ華やかな大会になったので、箱根に出ることで満足する学生もいるのかもしれない」

――どう意識を変えていけばいいのでしょう。

「何かに自信を持ってスタートラインに立つことが大切です。五輪で金メダルを取った高橋尚子さん、野口みずきさんは世界一の練習量をこなしたという自信を持って立ち、それを支えにした」

「いかに勝つか、もっと考えて」

「私は誰にも負けないスピードを磨いてきたんだと思ってスタートラインに立った。それが自分の強さなのだと自信を持っていた。いまの選手はそういうものを持てていないのかもしれない。ここだけは負けないというものをつくる必要がある」

――自分の強みに自信を持っていないと、レースの戦術を立てられないし、駆け引きができない。

「いかに勝つかをもっと考えたほうがいい。私は自分の良さを生かして、ほかの選手が嫌がることをしようと常に考えていた。スピードを生かして最初から飛ばすばかりでなく、後ろに構えていても主導権を握ることはできた。相手の頭に私のスピードがあったからです」

「勘違いかもしれないが、自分が主導権を握っていると思い込むことが重要です。自分を中心にレースが動いていると考えたほうがいい。みんなも、そう思っているのかもしれませんが……。川内優輝選手(埼玉県庁)はそれができているように感じる」

――しかし、レースは自分が想定したとおりに運ばないことがある。

「想定外の展開になったときもプラスに考えられるようでないといけない。予定より速いペースだったら、これはまずいと考えるより、チャンスだと思ったほうがいい」

「いまの選手を見ていると、ここまでこのペースでくることができたのだから、そのままいってしまえばいいのにと感じることがある。そうしないのは、先のことを計算しすぎるからなのか。もしかすると、練習をこれだけ積んできたという自信がないからかもしれない」

――いまは25キロ、30キロまでペースメーカーが引っ張ってくれるレースが多い。

「むかしはペースメーカーがいなかったので、自分でレースを組み立てた。瀬古利彦さんの時代は記録を出そうと思ったら、自分で最初から出ていくしかなかった」

「いまのマラソンではペースメーカーがたとえば1キロを3分のペースで30キロまで刻んでくれる。そこから、いかにペースを落とさず粘るかだけになっている。それはマラソンとはいえない」

「マラソンの本質である戦術や駆け引きが欠けている。42.195キロを走っているだけで、マラソンをしていない。それが大きな問題です。やる側にとっても、見る側にとっても、駆け引きこそがマラソンの面白いところなのに……。選手を育てるにはペースメーカーがいない大会も必要だと思う」

――日本のマラソンの黄金時代は瀬古さん、茂さん、猛さんの宗兄弟、中山竹通さん、伊藤国光さんをはじめとした個性のある選手が名勝負を演じていた。

「私が子どものころにテレビで見ていた選手はみな超人です。ひと癖もふた癖もあって面白かった。あの中に放り込まれてレースをしたら楽しいでしょうね。まるで戦国時代みたいな雰囲気ですから」

「瀬古さんはたぶんタイムのことは考えていなかったと思う。勝つことだけを考えて勝負をしていた。みんな瀬古さんを倒すにはどうしたらいいんだろうと考え、戦術を立てた。うまくいかなかったら、次はどの手でいこうかと考える。いまは目標となる絶対的な選手がいないのも問題になっている」

「マラソンに必要な我慢は何種類もある」

――マラソン選手にとって一番重要なことは?

「我慢でしょうね。マラソンはほかの選手の動きに影響されやすい。思い描いた通りの展開にならない。それにいらいらするようではダメ。我慢して冷静さを保たなくてはいけない」

「マラソンに必要な我慢とは何種類もある。当然、苦しくなったときに我慢しなければならない。ペースアップしてはいけないときに、しない我慢も必要」

――高岡さんが龍谷大からカネボウに進んだ理由は?

「当時の伊藤国光監督に教えてもらいたかったからです。カネボウに入れば強くなると思った。マラソン練習は苦しいものなので、監督を信じていないと立ち向かえない」

「私は若いうちはボリュームのある練習をこなす体力がなかったので、スピードを磨くことを続けながら体づくりをして、それからマラソンに挑んだ。最初に立てたプランに沿って強化を進めた」

「当時、マラソンで成功した欧州の選手がそのパターンだというのも伊藤さんの頭にあった。クロスカントリーやトラックの1万メートルで実績をつくり、30歳前後でマラソンに挑むのが一般的だった。それもあって私の強化方針を決めたのだと思う」

――伊藤監督は練習コースの距離表示をわざとずらすことがあったそうですね。

「伊藤さんにはずいぶんだまされた。どう考えても距離がおかしいので『長くありませんか』と尋ねると、『分かった?』と言ってニヤッとする。ペース感覚が養われているかどうかを試したのかもしれません。そういうちょっとした部分がうまかった」

「九州一周駅伝で『区間記録まで10秒だぞ』と言うから必死に走ったら、余裕で記録更新ということもあった。『あと10秒』とだましたのは、私の潜在能力を引き出すためだったのでしょう」

「伊藤監督は練習方法のアイデアが豊富だった。いろいろ工夫して、練習を組み立てるのがマラソン練習の面白いところです」

「マラソン練習というのは、その大会に向けた数カ月だけではない。その前の年に何をしたか、さらに前の年に何をしたかの積み重ねが結果に出るわけで、一朝一夕では済まない。毎年、上積みしていくものです」

――高岡さんは引退後、米国で研修し、トレーニング方法を目にしてきました。

「米国の選手は日本のように実業団に所属しているわけではなく、いわばプロなので食べていくにはレースで賞金を稼ぐしかない。日本の選手はケガで練習ができなくても給料をもらえるが、米国はそうではない」

「だからケガをしないトレーニングや体のケアを重視している。その一つが体幹トレーニングであり、自転車やプールを使ったクロストレーニング、ストレッチから発展させた体操などに取り組んでいる」

「走る量を増やすと故障のリスクがあるので、そこは追求せず、強度の高いトレーニングをしている。高地での低酸素トレーニングもその一つ。米国には高地トレーニングの拠点がたくさんある。カネボウとしては今後、高地トレーニングに本格的に取り組もうと思うが、日本に高地がないので困る」

「米国は科学的なものも積極的に取り入れている。男子マラソンで2人が入賞したリオデジャネイロ五輪では冷やした帽子をかぶり、給水の時に取り換えていたらしい。見えているものは一部であって、もっといろいろやっていると思う。科学的なものを知識として頭に入れるだけでなく実践することが重要でしょう」

――米国からはリオで銅メダルのラップら勝負強いランナーが出てきています。

「様々な特徴のある大会があるのも米国の強みでしょう。起伏の激しいボストン、ニューヨークはタフな選手を育む。平たんなシカゴはスピードランナーに向いている。そのシカゴが15年からペースメーカーを起用しなくなったのは英断です。これによって駆け引きが重要になった。日本は記録の出やすい平たんなコースばかりつくっている」

「中距離種目の強化をもっとやるべき」

――日本では駅伝の弊害が指摘されていますが、どう思いますか。

「駅伝が最終ゴールと考えてしまう選手がいるとしたら、弊害でしょう。しかし、駅伝の良さもある。前後の選手との差を意識して、自分で状況判断して走るのはプラスになる」

「駅伝はタスキを預かっている責任が重いので、チームのために無理をしなければならない。それが選手の潜在能力を引き出すことがあるし、マラソンのためのいい練習になる。そういう考えで駅伝を使えばいいと思う」

――マラソンの強化のために、ほかにやるべきことは?

「中距離種目の強化をもっとやるべきかもしれない。世界との差がマラソン以上に開いている中距離の底上げが5000メートル、1万メートルの長距離種目で活躍できる選手をつくり、それがいずれマラソンの強化につながる。中距離の魅力的な大会をつくる必要がある」

(聞き手は吉田誠一)

 高岡寿成(たかおか・としなり) 1970年9月24日、京都府生まれ。龍谷大からカネボウに進み、94年広島アジア大会で長距離2冠。初出場した96年アトランタ五輪は1万メートルで予選落ち、2000年シドニー五輪の同種目で7位入賞。01年の福岡国際でマラソンデビューし、02年シカゴで2時間6分16秒の日本記録を樹立した。マラソンでの代表を狙った04年アテネ大会は出場を逃したが、05年世界選手権では4位入賞。引退後、カネボウでコーチを務め、15年に監督に就任した。

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