日本代表、勝ち抜く覚悟がW杯出場の道開く
サッカージャーナリスト 大住良之
12月22日、日本サッカー協会は2017年の日本代表のスケジュールを発表した。前半にFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ2018ロシア大会のアジア最終予選が5試合あり、12月にはE-1選手権(旧東アジアカップ)が3試合入ることで、年間の試合数はFIFAの「インターナショナルウインドー(代表チーム活動日)」だけだった16年より3試合多い13試合となる見込みだ。
■17年活動始め、いきなり大勝負
ワールドカップのアジア最終予選は後半戦の5試合。3月23日、アウェー(会場は未発表だが、アブダビでの開催が濃厚)のアラブ首長国連邦(UAE)戦、同28日のタイ戦(埼玉スタジアム)と、17年の活動始めがいきなり「連勝必須」の大きな勝負となる。
予選B組は、首位サウジアラビアと2位日本が勝ち点10、3位オーストラリアと4位UAEが勝ち点9と大混戦になっている。16年9月にホームで思いがけない敗戦を喫したUAEにアウェーでその借りを返し、埼玉に戻ってのタイ戦と合わせた連勝で一挙に抜け出したいところだ。
幸い、3月のUAEはまだそう暑くなく、日本選手にとっては戦いやすい時期。欧州との時差が3時間なので、3月20日に始まるトレーニングも試合地あるいは近隣の中東地域で行われることになるだろう。
6月のイラク戦も会場は未定だが、イランのテヘランでの開催が濃厚。6月のテヘランは気温が高く、厳しい条件になるのは間違いない。ただ、この試合は6月5日にスタートする「インターナショナルウインドー」の最終日、13日にあたり、日本としては8日か9日あたりに中東地域で親善試合を組み、イラク戦のために万全の準備をすることが可能だ。
そしてアジア最終予選は大詰めとなり、ホームのオーストラリア戦(8月31日)とアウェーのサウジ戦(9月5日)を迎える。9月5日のサウジでのゲームは過酷なコンディションとなるのは必至。この試合を前にオーストラリア戦を勝って「2位以内」にめどをつけておきたいところだ。
16年後半、日本代表は攻撃の鋭さを失って苦しんだ。これまで中心となってきた「欧州組」の攻撃陣が所属クラブで出場機会を得られず、非常に低調なパフォーマンスしかできなかったからだ。
それでもハリルホジッチ監督は、FW本田圭佑、MF香川真司、FW岡崎慎司という実績のある選手たちの経験を重視して9月からのアジア最終予選に突入した。だが初戦でいきなりUAEに1-2で逆転負け。ボールを支配して本田のヘッドで先制したが、その後の攻撃も最後のところで決めきれず、UAEのFKとPKにしてやられた。
続くタイ戦は相手が疲れていたこともあって2-0で危なげなく勝ったが、「10月シリーズ」でも低調な試合は続き、イラクとは後半追加タイムのMF山口蛍の劇的な決勝ゴールでなんとか2-1と勝ちきった。そしてアウェーのオーストラリア戦では本田を1トップにした「カウンターサッカー」に徹して勝ち点1(1-1)を得たが、攻撃の手詰まり感はぬぐえなかった。
そして11月、ハリルホジッチ監督はようやく決断した。先発から本田も香川も岡崎も外し、久保裕也、大迫勇也、原口元気という「新世代」のアタッカーでFWラインを組み、それをやはり新世代の清武弘嗣が操るという攻撃陣だった。
この布陣が当たった。11月15日、B組で首位を走るサウジを迎えた試合では攻撃陣が非常に活発なプレーを見せて相手を圧倒し、2-1の勝利を収めたのである。
GK西川周作、DF酒井宏樹、吉田麻也、森重真人、長友佑都、MF山口蛍、長谷部誠、清武弘嗣、FWに久保裕也、大迫勇也、原口元気。
10年ワールドカップ以来の選手は長谷部と長友の2人になり、イメージも一新された。
ただ、後半から交代出場した本田は試合をしっかりコントロールし、試合への影響力が落ちていないことを感じさせた。香川と岡崎も「ベテラン」と呼べるような年齢ではなく、所属クラブでコンスタントに出場できるようになれば再びポジションを取り戻す可能性が高い。
16年11月に至るまで、若手たちにはこうした選手たちを追い落とす勢いが感じられなかった。あるいは、ハリルホジッチ監督が使わなかったために力を示す機会が与えられなかったのか――。
■ハリル監督、若手をさらに積極投入か
しかしサウジ戦で、「やらせればできる」ことが証明された。17年、ハリルホジッチ監督はさらに若い力の投入に積極的になるだろう。
DFでは、鹿島の一員として12月のFIFAクラブワールドカップで大活躍した昌子源が注目だ。1対1の強さはレアル・マドリードを相手にした試合で証明済み。吉田と森重の一角を崩し、レギュラーポジションを獲得する可能性は十分ある。
MFではやはりクラブワールドカップで活躍した柴崎岳が挙げられる。柴崎はアギーレ前監督時代に注目され、ハリルホジッチ監督も最初はレギュラーに近い形で使っていたが、15年11月に代表から外すと、16年は一度も招集しなかった。
そしてFWには、これからの日本代表の中心になる候補選手がひしめいている。
大迫は「日本代表ワントップ」の座をすでに自分のものにしたように見える。ボールを収める、周囲を使う、そして自ら切り開いて得点する。献身的な動きもあり、総合点では間違いなくナンバーワンだ。
そのほかにも、アジア最終予選で4試合連続得点の原口、Jリーグチャンピオンシップとクラブワールドカップで高い得点能力を示した金崎夢生、ドリブル突破の威力では日本でトップクラスの斎藤学、スピード突破の浅野拓磨、テクニックとシュートなど総合的な力をもつ久保。スピードと運動量の小林悠。さらには、高いポテンシャルをもつ宇佐美貴史、武藤嘉紀、南野拓実……。
15年3月に就任し、16年までは「安全策」で経験を重視していたハリルホジッチ監督がこれらの素材をどう生かし、18年に向けてどんなチームを形づくっていくのか、そこが17年の最大の見どころだ。
ただ、現時点での事実は、予選はまだ混沌としているということだ。イラクとタイが引き離された形だが、1勝ち点差内でひしめいている4チームのうち、ストレートに「ロシア行き」の切符を手にできるのは2チームだけ。4位はその機会を失い、3位になってもアジアのプレーオフを戦い、それに勝ったうえで北中米カリブ海地区4位との最終プレーオフに臨まなければならない。
「インターナショナルウインドー」は10月(2~10日)と11月(6~14日)にも組まれている。アジア最終予選B組で2位以内を確保できれば、ここにはアジア外の強豪との親善試合計4試合が組まれることになるだろう。
だがもし3位になれば10月5、10日にホームアンドアウェー方式でA組(イラン、韓国、ウズベキスタン、シリア、カタール、中国)の3位とのプレーオフを戦う。そしてそれに勝ったうえで11月6、14日に北中米カリブ海4位とのプレーオフだ。こちらはアジア側のホームゲームが14日ということが決まっている。
まだ「18年」の話をするのは早い。たとえ11月まで戦いが長引いても戦い抜き、勝ち抜く覚悟を持つことが17年に必要な心構えに違いない。