中田久美氏に続け　バレー盛り上げる女性監督

2020年東京五輪で2大会ぶりのメダル獲得を目指し、久光製薬を3度のリーグ優勝に導いた中田久美総監督（51）が日本代表を率いることになった女子バレーボール。女性監督の活躍は全日本だけにとどまらない。今季のVプレミアリーグではJTの吉原知子氏（46）、トヨタ車体の多治見麻子氏（44）と2人の女性監督が指揮を執っている。

■吉原監督「前を向きやるべきこと徹底」

昨季、下部のチャレンジリーグを制し、プレミアに昇格したJTは第1レグでは5勝2敗。一時は首位に立つなど好調なスタートを見せた。11月5日、連覇を狙う久光製薬との初対戦では2セットを連取されながらフルセットに持ち込む健闘ぶり。吉原監督は「プレミアで本当にやれるか半信半疑の部分もあったと思うけれど、選手たちもやれるという気持ちになったと思う」と手応えを口にしていた。

もっとも、第2レグに入ってからは、対戦相手による研究もあって、11月27日のNEC戦からトヨタ車体、久光製薬を相手に3連敗と苦戦続き。現在は6勝5敗の勝ち点18で久光製薬、日立、NECに次ぐ4位につける。

セッターの田中美咲、ウイングスパイカーの田中瑞稀という全日本候補の選手や5月の五輪最終予選で日本を苦しめたタイのオヌマー・シッティラックはいるものの、選手層は厚いとはいえない。今月4日の久光戦後に吉原監督は「苦しい戦いが続くが、しっかりと前を向き、やるべきことを徹底できるようにしていきたい」とコメントしている。

■多治見監督「勝って自信つけていければ」

今季から多治見監督が就任したトヨタ車体は開幕戦でJTにストレート負けを喫するなど序盤戦は1勝3敗と苦しんだ。それでも、11月13日の東レ戦ではエースのポリーナ・ラヒモワ（アゼルバイジャン）が43得点を挙げる活躍もあり、競り勝って上昇ムードに。「今はチームづくりの途中。勝って自信をつけていければ」と監督が話していたチームはJTとの2度目の対戦は3-1で雪辱した。ここまで5勝6敗の勝ち点14で5位だ。

昨季までのトヨタ車体は助っ人のラヒモワにボールを集め、力でねじ伏せるバレーをしていた。今季は新戦力として北京、ロンドン、リオデジャネイロと3度の五輪に出場したベテランミドルブロッカーの荒木絵里香が加入。多治見監督は「ラヒモワ頼みの攻撃からの脱皮」を目指している。もちろん、ラヒモワ中心の攻撃が一変したわけではないが、センターからの速攻も徐々に増え、攻撃のバリエーションが徐々に増えてきている印象だ。

中田総監督も含め、3人はかつて女子バレーを引っ張った日立（現在の日立とは別チーム）の中心選手。そろって出場した1992年バルセロナ五輪をはじめ、それぞれが3度五輪を経験している。

吉原監督は94年にVリーグがプロ化を目指した際、当時の中心選手だった大林素子さんとともに日立を解雇された経験を持つ。その後、イタリアに渡り、大林さんとともに日本初のプロバレーボール選手としてセリエAで活躍。アンコーナ、ローマに在籍し、ローマではチームの準優勝に貢献した。96年アトランタ五輪以降は全日本を外れたが、03年に主将として代表に復帰。チームをまとめあげてシドニー五輪で出場を逃した女子バレーを再建し、04年のアテネ五輪出場につなげた。

■全日本にどんな選手育て、送り込むか

多治見監督は91年から日立が廃部となる01年まで在籍し、その後は吉原監督とともに在籍したパイオニアのリーグ初優勝に貢献。08年北京五輪ではアトランタ以来の五輪出場を果たし、12年まで現役を続けた。引退後は東京三鷹市の嘱託職員として国体の運営などに携わり、指導者を目指すために14年4月から早稲田大学スポーツ科学研究科の修士課程で学んでいる。

豊かな経験を生かし、今度は指導者として後進の育成について腕を競い合う。そして4年後には2大会ぶりのメダルを目指す20年東京五輪が控えている。吉原、多治見の両監督が「久美さんが道をつくってくれた」と口をそろえる中田監督が指揮する全日本にどんな選手を育て、送り込むか。吉原監督は「目指せるチャンスは全員にあるよね、という話はしている」という。多治見監督も「4年後、バレーボールをやるからには（選手には）そういう場所（五輪）に立ってほしい」と意欲を見せている。

（馬場到）