夫と歩んだ柔の道 広瀬順、女子視覚障害で初の銅
スペイン選手との3位決定戦。柔道女子57キロ級の広瀬順子(伊藤忠丸紅鉄鋼)は開始すぐに大外刈りで有効をとると、強化をはかってきた足技を使って積極的に攻める。残り1分30秒余り、足元を警戒する相手を今度は宝刀の一本背負いで転がし、そのまま抑え込んだ。日本の視覚障害者柔道の女子では史上初のメダルとなる銅を射止め、「うれしいです」と笑顔を見せた。
相手は32歳ながら、ロンドン大会までパラリンピック3大会連続3位の強豪。しかも一昨年の世界選手権、昨年のワールドカップ(W杯)と2年連続対戦して負けている。だがこの日は、どちらがメダリストだかわからないような広瀬の攻勢が目立った。成長のきっかけは昨年、男子90キロ級代表の広瀬悠(伊藤忠丸紅鉄鋼)との結婚。夫婦の道は柔らの道と定めたことにある。
一緒に自宅近くの山道を走り、常に2人でトレーニングに臨む。「1人でやるより2人でやる方が励まし合いながらできるし、夫の方が経験があるのでコーチとしても教えてもらえる」。昨秋は懸垂1回がやっとだったのが、「今は20回ぐらいできる」と明らかにパワーがついた。
また、一時格闘家を目指した悠が開いたブラジリアン柔術の教室に通い苦手の寝技も磨いた。1回戦も圧倒的に攻め続け、横四方固めで一本勝ちと効果はてきめん。悠も「不得意だった寝技で2回勝って感無量」と長足の進歩をたたえる。
ブラジル選手に組み負けて何もさせてもらえずに敗れた準決勝の後も、悠が組み方をアドバイス。そして届いたメダルに「柔道がより楽しくできるようになって、練習に身が入って強くなれた」と広瀬は夫の献身に感謝した。
明日10日は夫の試合。「夫婦2人でメダルなしはまずい」と大会前に話していたそうで、そのノルマは妻が達成。「プレッシャーがなくなったので、しっかり取りにいってくれると思う」。もちろん、自分よりいい色を願っている。(摂待卓)