日本「全員バスケ」戦略 12人で6編成つくる
戦況に応じ最適布陣
【リオデジャネイロ=摂待卓】7日(日本時間8日)に開幕したリオデジャネイロ・パラリンピックで、車いすバスケットボール男子の日本は、代表史上最強の呼び声が高い。3年前に就任した及川晋平ヘッドコーチが、12人の選手で様々に異なる編成をつくる「ユニット制」を敷き、強豪国相手にも結果を出している。過去最高の6位以上を目標に8日(同9日)、1次リーグ初戦のトルコと戦う。
ユニット制を採用するきっかけは、2014年世界選手権での苦い経験だ。1次リーグのイラン戦で第3クオーター(Q)まで15点差で勝っていたのに、第4Qでひっくり返された。翌日の韓国戦も逆転されて2点差で負けた。
藤本怜央と香西宏昭の両エースに頼り、疲れがたまる終盤、2人の動きが鈍ってつけいるすきを与えた。車いすバスケは動くのにもシュートをうつのにも手を使うので、プレー時間が長くなれば攻守ともに精度が落ちる。
そんな「飛車角頼み」から脱却しようと始めたのがユニット制で、6つの編成がある。車いすバスケは選手個々の障害に応じた持ち点がついており、5人の合計を14点以内にして戦うルールになっている。
そのルール内でできる組み合わせは、大まかに言えば、藤本と香西が入るもの、香西が入るもの、藤本が入るもの、両者とも入らないもの、に分かれる。それぞれのユニットが目指すべきプレーを明確にして、個々の選手に自らの役割を果たすよう促す。及川コーチは「40分間12人をしっかり使って、最後までエネルギーを落とさずに勝ちきる」と狙いを話す。
長年、代表を務めるベテランの藤井新悟は「かつてはプレー時間に如実に偏りがあったが、今はどのユニットが出ても戦力が落ちない。個人がやることを全うする思いで試合に入るので、それがチームの力になっている」と利点を強調する。
大きな試合で先発するのはユニット1。代表の軸とも言える編成で、これでまず試合の流れをつくり、後は仕掛けたいプレー、相手の編成に応じて臨機応変に別のユニットを投入していく。ユニット5は、ユニット1の主力が全員休める編成。17歳の高校3年生、鳥海連志の成長もあり、今年1月のカナダ遠征ではロンドン・パラリンピック優勝のカナダに勝利した原動力となった。
チームの力は確実に上がった。リオの前哨戦となった7月の英国での国際大会で、世界王者のオーストラリアに練習試合も含めて1勝2敗。負けも接戦で、どんな相手でも70点以上とる豪州を51得点に抑えた試合もあった。及川コーチは「それが成長のサインだとしたら、リオでは楽しみになる」と自信を見せる。
リオでは12チームが2つに分かれて1次リーグを戦い、上位4チームが決勝トーナメントに進出する。1次リーグで3位になれば、たとえ決勝トーナメント初戦で負けても5~6位決定戦に回る仕組みなので、日本の目標は達成となる。
星勘定を考えると、1次リーグで3位になるには最低3勝はしたい。カナダ、オランダには英国の大会で15点以上の大差をつけて勝っている。豪州は別格として、世界選手権3位のトルコ、同4位のスペインとあたる序盤の戦いがカギを握りそうだ。