全英オープン14日開幕 マキロイ、輝き取り戻せるか
米ゴルフウイーク誌記者 ジム・マッケイブ
スコットランド西海岸のロイヤルトルーンGC(オールドコース)で行われる男子ゴルフの今季メジャー第3戦、第145回全英オープン選手権(14~17日)。なんとかよい大会にと期待値が高いのは、このところゴルフ界で重く、暗いニュースが続く反動か。
先月行われた全米オープンでは、ダスティン・ジョンソン(米国)が優勝したが、5番でパットのアドレスに入ろうとしたところでボールが動いた問題で、全米ゴルフ協会は12番のティーグラウンドでD・ジョンソンに「ホールアウト後に協議する」と伝えた。その判断により、D・ジョンソンを含めトップを争っている選手らは、残り7~8ホールを正確なトップのスコアを知らずに回ることを迫られ、後味の悪さが残った。
■トッププロが次々辞退、過密日程も一因
また来月、112年ぶりに五輪でゴルフが行われるが、世界のトッププロが次々に辞退を表明。世界ランキング1位のジェーソン・デー(オーストラリア)、全米オープンを制した同2位のD・ジョンソン、同3位のジョーダン・スピース(米国)、同4位のロリー・マキロイ(英国)らも相次いで不参加を決め、日本の松山英樹も例外ではなかった。
一様に現地ではやっているジカ熱への懸念を理由としているが、過密日程も敬遠につながった一因だろう。今年はその五輪の影響で全米プロ選手権(7月28~31日)が前倒しで行われる。全英オープンが終わってから中1週しかない。また、五輪が終わってその2週間後には年間のチャンピオンを決める4試合のプレーオフ(フェデックスカップ)が始まる。そこに万全で臨むとしたら、選手が全英オープン、全米プロ選手権と続くメジャー大会の疲れを五輪期間に取りたいと考えて不思議ではない。あからさまな五輪軽視だが、残念ながら金メダルの価値はスポーツによって変わる。
さて、そうしてここ1カ月は、世界のゴルフ界が混乱したわけだが、今回の全英オープンに関しては、例えば、誰が出て、誰が出ない、という話を耳にすることはない。先ほど触れた5人も出場し、五輪不参加を早くから表明したアダム・スコット(オーストラリア)らももちろん参戦する。ビッグネームで欠けるとしたら、故障をしているタイガー・ウッズ(米国)ぐらいではないか。五輪には申し訳ないが、真の勝者を決めるのにふさわしい顔ぶれがそろった。
では今大会は、どんな展開になっていくのだろう。
全米オープンでメジャー初制覇を成し遂げたD・ジョンソンは2週間後に行われた世界選手権シリーズ、ブリヂストン招待にも勝って、好調を持続している。彼が優勝候補筆頭といえるが、昨年、ゴルフの聖地セントアンドルーズ・オールドコースで行われた全英オープンではデー、スピース、スコットらが一様に悔しい思いをしており、雪辱すべく今年の全英オープンに臨む。
そうした中で鍵を握るのはマキロイではないか。先月の全米オープンでは予選突破できなかった。先日の欧州ツアー「フレンチオープン」でも3位に入ったが、優勝争いに加われなかった。彼がメジャーで2勝を挙げた2014年のように他を圧倒するようなゴルファーに戻れるかどうか。世界ランク1位を再び奪えるのか。地元でどんな戦い方ができるかが見どころだ。
■名物ホール8番、過去に様々なドラマも
なお、ロイヤルトルーンGC(オールドコース)の名物ホールといえば、8番(パー3)である。123ヤードと距離は短いものの、風向き次第では選手に牙をむく。「ポステージスタンプ」というニックネームがついているのはティーグラウンドから見た場合、まるで、切手のように長細く、小さいからとされ、過去、様々なドラマがここで起きている。1950年の大会ではアマチュア選手が15もたたいた。一方で73年には、史上初の「キャリアグランドスラム」を成し遂げたジーン・サラゼンがホールインワンをマークした。
今回、願わくば暗い影を振り払うためにも、サラゼンのホールインワンのように長く語り継がれるシーンがほしい。ゴルフ本来が持つ歴史と伝統の重みがにじむロイヤルトルーンGCなら、その舞台として不足はない。