JX、遠い経常益5000億円 今期は3000億円、3期ぶり黒字
JXホールディングスは7日、2017年3月期の連結経常損益が3000億円の黒字(前期は86億円の赤字)と、3期ぶりに黒字転換する見込みだと発表した。4月には東燃ゼネラル石油との経営統合が待つ。上方修正後でも新会社の経常利益目標5000億円は3割増の高い目標。業界の盟主、JXが主導権を握りつつも、いかにパートナーの効率経営を素直に学べるかが焦点になる。
上方修正の要因は原油価格の回復に尽きる。両社が指標とするドバイ原油は一時1バレル20ドル台に急落したが、足元で50ドル台半ばに上昇。JXの経常利益見通しの上方修正額700億円のうち、600億円を在庫評価額の上振れが占める。在庫評価益1100億円を除いた実質的な経常利益は1900億円と、前期比27%減った。円高や石油製品の市況悪化、銅鉱山の費用増加も響いた。
統合相手である東燃ゼネは、かつて米エクソンモービル傘下にあり、海外での資源開発などから距離を置き、国内での精製・販売に経営資源を集中してきた。従業員数は約3300人とJXの約8分の1。1リットル当たりの利益額はJXを1円程度上回り、実質的な経常利益率は3.3%と、JXの2.3%を上回る。
JXの中核事業会社であるJXエネルギーの杉森務社長は「統合後は効率的な運営ノウハウを取り込むことができる」と話す。だが、株式市場では「コスト管理の緩いJXが本当に効率性を高められるのか」(SMBC日興証券の塩田英俊氏)と懐疑的な見方もある。
国内の石油製品の需要が年数%ずつ減少し続ける中、5000億円の経常利益を稼ぎ出すのは簡単ではない。東燃ゼネの武藤潤社長は「目標は必達。ロスの垂れ流しは許さず、投資基準を明確にする」と、言外にJXをけん制するかのように語る。
一方のJXは「トップ企業とそれ以外では役割も異なる」(幹部)と強調する。給油所の数の多さや、水素ステーションなど収益貢献しない事業の存在などが投資家から批判されても、採算が悪い地方都市への燃料の供給責任を負っており、次世代エネルギー開発への参画も必要との立場だ。
現在、両社は統合に向けて具体的な体制作りの真っ最中。経常利益5000億円を安定的に計上するには、製油所の合理化なども欠かせない。今後発表する経営計画では、トップ企業としての責任を全うしながらも、目標達成への具体的な道筋を示すことが必要になりそうだ。(押野真也)