東大、量子力学から熱力学第二法則を導出することに成功
【プレスリリース】発表日:2017年9月6日
量子力学から熱力学第二法則を導出することに成功
~「時間の矢」の起源の解明へ大きな一歩~
1. 発表者
伊與田英輝 (東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教)
金子 和哉 (東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程1年生)
沙川 貴大 (東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 准教授)
2. 発表のポイント
◆マクロな世界の基本法則である熱力学第二法則を、カノニカル分布(注1)など統計力学(注2)の概念を使うことなくミクロな世界の基本法則である量子力学から、理論的に導出することに成功しました。
◆極微の世界を支配する「量子力学」と、私達の日常を支配する「熱力学」という、二つの大きく隔たった体系を直接に結びつけることができました。
◆冷却原子気体(注3)など高度に制御された量子多体系の非平衡ダイナミクスの理解にもつながると期待されます。
3. 発表概要
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の伊與田英輝助教、金子和哉大学院生、沙川貴大准教授は、マクロ(巨視的)な世界の基本法則で、不可逆な変化に関する熱力学第二法則を、ミクロな世界の基本法則である量子力学から、理論的に導出することに成功しました。これは、極微の世界を支配する「量子力学」と、私達の日常を支配する「熱力学」という、二つの大きく隔たった体系を直接に結び付けるものです。
本研究では、量子多体系の理論に基づき、単一の波動関数(注4)で表される量子力学系において、熱力学第二法則を理論的に導きました。従来の研究とは異なり、カノニカル分布などの統計力学の概念を使うことなく、多体系の量子力学に基づいて第二法則を導出したことが、本研究の大きな特徴です。さらに、ゆらぎの定理と呼ばれる熱力学第二法則の一般化を、同様の設定で証明することにも成功しました。
本研究の成果は、量子力学だけに基づいて不可逆性の起源を理解する大きな一歩となるのみならず、冷却原子気体など高度に制御された量子多体系の非平衡ダイナミクスの理解にもつながると期待されます。
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