IoT国際規格、日独主導 推進へ宣言署名
【ハノーバー=八十島綾平】日独両政府はあらゆるモノがネットにつながるIoT技術や人工知能(AI)などの先端技術で連携を強める。両国で国際標準規格の策定や研究開発を進めることを柱とした「ハノーバー宣言」に署名した。ドイツは国際規格の策定で最も強い影響力を持つ国。政府にはドイツと組むことで日本企業の技術を海外展開しやすい環境をつくるねらいがある。
安倍晋三首相は20日午前(日本時間20日午後)、ハノーバーで開幕したIT(情報技術)の見本市「CeBIT」をメルケル独首相と視察。安倍首相はAIなどの最先端技術に触れ、日本企業の展示をアピールした。
開幕に先立ち両政府が結んだハノーバー宣言の柱が、IoTや次世代の自動車にかかわる国際規格づくりの日独協調だ。
CeBIT開幕前に両首相は「モノ・人がみなつながる時代には、共通の規格が必要になる」(安倍首相)、「規格の標準化や統一なくして、これからの社会は成り立たない」(メルケル首相)と重要性を訴えた。
国際規格は国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)などで決まる。規格に合っているかどうかは、製品やサービスの輸出入に直結するため、各国は自国企業に有利な規格の策定にしのぎを削っている。
ドイツは伝統的にこの分野で強い影響力を持つ。ノートのA3、A4といった寸法も、もとはドイツ国内の規格が国際規格化したもの。現在、各国際機関にある計約950の幹部ポストのうち、ドイツは約2割の約170ポストに自国企業の幹部などを送り込んでいる。日本は95で第3位だ。
一方、中国もここ10年の間でポスト獲得数を約10倍に伸ばすなど力を入れ始めている。国際規格は各国の投票によって決まるという政治的要素が強く、日本は影響力の大きいドイツと組むことで、今後もIoTやAIなど先端分野で有利に規格策定を進めるねらいだ。
自動車分野では電気自動車の超急速充電方式の開発や、自動運転に使う3D地図の開発手法の確立などで協調する。欧州地図大手ヒアと日本企業各社で作る「ダイナミックマップ基盤企画(DMP)」の技術提携を含めた官民協力を確認した。
このほかものづくりの現場でのサイバーセキュリティーの強化、日本の情報通信研究機構とドイツの人工知能研究所の連携も進める。