生乳の卸価格、地域差1.6倍 業界団体が初公表
牛乳やバターの原料である生乳を乳業メーカーに卸す地域ごとの価格(乳価)を、業界団体の中央酪農会議が16日に初めて公表した。酪農家の規模が大きく最も安い北海道と小規模で最も高い沖縄の間で約1.6倍もの差があった。価格差の背景には、地域別、用途別の管理体制で需要に応じて柔軟に供給量を変えられない生乳の流通構造がある。
森山裕農相の指導に応じ公表した。生乳はバターや生クリームなど用途ごとに全国10の地域ごとに年1度、乳価を決める。原則すべての生乳を酪農家から農協が買い取り、年間を通して同じ乳価で雪印など乳業メーカーに卸す。2014年度の乳価(平均値)は北海道が1キロ82円で最も安く、九州104円、東北105円、関東107円、四国111円など。沖縄が131円と最も高い。
価格の開示が明らかにしたのは、生乳の適地生産が進みにくい現状だ。これだけ価格差があれば北海道以外の酪農家は淘汰されそうだが、生乳の流通が特殊なため淘汰は起きない。
酪農家は農協系の指定団体を通さず生乳を売ると補助金をもらえない。このため9割超の生乳は全国10の指定団体を通して取引される。各指定団体は安い北海道の生乳が本州以南にこれ以上入らないよう調整する。一番高く売れる牛乳向けの生乳の多くは本州・四国・九州産の生乳で、最も安い北海道の生乳は大半がバターや脱脂粉乳に加工される。
このため大きな価格差があっても北海道産の生乳が本州以南に出回りにくい。バター不足でバター向け生乳の需要が増えても、バターをなかなか増産できない。
自民党は乳業団体や農協が取る手数料の開示も求める。手数料は酪農家の手取りが増えにくい一因とされ、これも地域差が大きいとされる。