東京海上日動のイデコ、展望を聞く(投信観測所)
老後に向けた資産形成に個人の関心が高まるなか、個人型確定拠出年金(イデコ)へ注目が集まっている。イデコを取り扱う運営管理機関(金融機関)大手の東京海上日動火災保険は、全国の地方銀行や信用金庫などと提携し、受付窓口として地域に根差した対面サービスを提供することで口座数を伸ばしてきた。今年3月からは、加入者の利便性向上のためLINEアカウントで運用状況を確認できる新たなサービスを開始。多様化する個人投資家のニーズにどう応えていくか――。同社の確定拠出年金部の安藤慎部長に話を聞いた。
――東京海上日動のイデコの現状は。
「2019年10月時点で145社の地域金融機関と提携している。弊社グループの保険代理店での取り扱いも合わせて、口座数は27万件を突破した」
「運用資産の状況は、2017年以降に取り扱いを開始した新プランでは、元本確保型商品と投資信託のウエートが半々になっている。それまでは、元本確保型商品が資産全体のおよそ7割を占めていたが、2017年に弊社の商品プランを刷新したことや投資教育の内容を見直したことで、投資信託のウエートが増加してきた」
「投資信託の商品ラインアップは投資対象別にまんべんなく取りそろえている。人気があるのは複数の資産に分散投資するバランス型の商品だ。提携する金融機関によって商品のラインアップを変えて提供することもある。」
――イデコの運営管理機関としてサポートしていることは。
「コールセンターを通じて、加入者や加入を検討している人からの相談、問い合わせに対応している。資産運用の基本的な知識や制度に関する問い合わせが多いが、特に地域金融機関で対応しにくい時間帯の手続きに関してはコールセンターが全面的にバックアップする。また、個人投資家のニーズに対応し、教育動画やeラーニングも提供している」
「資産運用は金融市場以外のリスクに左右されることも多く、金融の知識だけで資産運用を理解したことにはならない。資産運用で重要なのは、投資の基本である長期・分散・積み立てを実践することだと思う。そのためには、投資教育を通じて、お客様個人と金融機関の間にある情報の非対称性を埋める努力が必要だ。運営管理機関として、提携する金融機関に対しても、その先にいるお客様に対しても有益となる情報を発信し続けている」
――最近の取り組みは。
「今年3月からイデコの加入者が無料通話アプリのLINE(ライン)で運用の残高などを確認できるサービスを始めた。一度登録すると10ケタのIDを都度入力しなくて済むため手間が省ける。イデコの投資は長期に及ぶので、加入者は自身の運用に徐々に関心が薄れていく傾向がある。手軽に資産の状況を見られる媒体があることで、イデコを身近に感じ、成功体験を実感できる」
「同LINEサービスの登録者数は増え続け、足元では2万人近い。登録者には月1回程度弊社からメッセージを送り、普段から意識してもらえるように工夫している。現時点における資産残高・利回りの確認や資産運用に関する動画の視聴、医療相談ができるメディカルアシスト(無料相談窓口)の利用もLINE上からアクセス可能だ。ワンクリックでホームページに移動し、投資資産の組み入れ変更など実際に資金を動かす手続きは、加入者専用ページで行うためセキュリティー面で安心できる」
――今後の展望は。
「提携している地域金融機関の皆さまは地域に根差したネットワークを持ち、加入者が対面で相談できる安心感・信頼感がある。弊社のもつ情報力や専門性を生かしたサービスやインフラの提供とうまく融合させることでお客様の利便性を高め、イデコの拡大につなげていきたい」
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)
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