英個人投資家、自国株に資金回帰か(海外投信事情)
12日の英総選挙で与党・保守党が大勝を収め、英株式市場では相場の先行きに楽観的な見方が広がっている。代表的な株価指数であるFTSE100種総合株価指数は選挙後の1週間で4%上げた。2020年1月末までの英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る目先の不透明感が和らぎ、英国株で運用するファンドの売り越しを続ける英個人投資家の姿勢も変化しそうだ。
英与党大勝で個人の英国株売りに変化も
英国投資協会(IA)によると、国民投票でブレグジットが決定した16年以降、英国株で運用するファンドから英個人投資家の資金は流出が続いている。19年は1~10月に28億ポンド(約4000億円)の流出超で、16年以降の流出超過額は150億ポンドを超えた。ブレグジットへの警戒感から英国株型ファンドを敬遠し、グローバル株型や北米株型といったファンドに資金が振り向けられてきた。
約4年に及ぶブレグジット相場が転換点を迎えるとあって、「英国株には他の欧州株と比べた出遅れ感や配当利回りの高さといった株価指標面での妙味も出てきたことから、さすがに資金を振り向けようと考える個人投資家も増えるだろう」(在英金融機関の欧州株セールス担当)との声が出ている。
英与党の大勝について、米ゴールドマン・サックスは「政策の不確実性の後退や拡大的な財政政策などにより、英経済は2020年後半に回復が見込まれる」と指摘。CMCマーケッツのアナリスト、マイケル・ヒューソン氏は、ブレグジット移行期間の延長問題など波乱要因はあるとしつつも「英国株は今後数週間から数カ月で高値を目指す可能性が高く、FTSE100は8000に向けて上昇する」と予想する。
英国株に出遅れ感強く
FTSE100は今年の上昇率が1割強にとどまり、2割を超えるドイツ株式指数(DAX)やフランスCAC40、米ダウ工業株30種平均と比べて出遅れ感が強い。何度となく振り回されたブレグジットのゴールが見えてきたことで、相場の上昇余地は大きいとの見方もある。
各金融機関などが年末に公表する翌年の株式相場見通しは、期待を込めて強気になりがちだが、大きな懸念要因がはく落しそうな20年の予想は例年以上にその傾向が強まるとみられる。強気な見通しは英国株に対する個人の心理改善を後押ししそうだ。
(QUICK資産運用研究所ロンドン 荒木朋)