株、堅調相場の息切れに注意 半導体株にみる奇妙な楽観
23日午前の東京株式市場で日経平均株価は反落し、前日比52円安の2万2165円で終えた。連日で上場来高値を更新していたファストリが売られて日経平均を下押ししたほか、外国為替市場での円高進行などもあって輸出関連株に売りが目立った。ただ一部のディフェンシブ株には買いも入り、下値は限定的だ。中国景気の底入れ期待に後押しされ、日経平均は10連休を前に高値圏での堅調な展開が続いているが、楽観相場の息切れを警戒する声も徐々に増えている。
23日は、米ヘルスケア株の下げが嫌気されて足元まで売られてきた第一三共やアステラスといった医薬品株が上昇した。半面、中国関連とされる安川電が一時5%超下落した。「日本の10連休を直前に控え、投資家の持ち高調整の動きはまだ残っている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト)という。
相場全体は高値圏で一進一退するが、決して悲観ムードではなく、むしろ10連休後の先高観が相場を支えている構図だ。しかし「投資家は先の先まで織り込んでしまっている」(JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾グローバル・マーケット・ストラテジスト)と懸念する声も根強くある。奇妙な楽観相場を読み解くカギは、世界的に相場上昇のけん引役となってきた半導体関連株だ。
米国半導体工業会(SIA)によると、半導体の世界売上高(3カ月移動平均)は1月に減収に転じた後、2月が前年比10.6%減と減少率は拡大した。一方で、主な半導体銘柄で構成する米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は昨年12月末ごろに底入れし、足元では過去最高値圏に浮上している。前川氏によると、半導体売上高が減収に転じる前にSOXが底入れしたのは過去20年超で初めてだという。
米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など主要な中央銀行が金融政策の引き締めに消極的な「ハト派」へと傾くなか、このところ中国の景気指標も改善している。「今年に入って世界景気を巡るポジティブサプライズが相次いだことが投資家の強気姿勢を後押しし、異例の楽観相場につながった」(前川氏)。
ただ、投資家の楽観を醸成したポジティブサプライズが続くとは限らない。岡三証券の阿部健児チーフストラテジストは、日本の企業側が2019年3月期決算とあわせて公表する20年3月期の経常利益見通しは市場予想を10%程度下回り、前期比で2%程度の減益になると予想する。世界の景気減速懸念が強まった17年3月期は期初時点の見通しが市場予想を13.5%下回っていたといい、今期も慎重な見通しが避けられないとみる。
中国政府の景気対策は指標が改善すれば発動が見送られる可能性もある。不動産投資の規制を緩める様子もなく、景気テコ入れ策の効果がどこまで続くかは不透明だ。きょうは前日の米SOXが小幅上昇したにもかかわらず、半導体関連のスクリン株は5%超下落。東エレクやアドテスト株も軟調だ。「金融や自動車、通信といった主要業種で強気の利益予想が出てくるとは考えにくく、株式相場もいったんピークを迎える公算は大きい」(三菱モルガンの藤戸氏)との警戒を頭にとどめておく必要はあるだろう。
〔日経QUICKニュース(NQN) 神能淳志〕