米株最高値更新、トランプ氏再選へ追い風
トランプ米大統領はご機嫌である。
「株価新高値更新! このニュースを伝えるのに飽きることはない。そして勝つことに飽きることもない」
「トランプ当選からダウ工業株30種平均は1万ポイント上昇(FOXニュース)」
とツイートを連発。
さらに「まずは短期的な米中合意で国内経済を支え、大統領選挙後に本格的な米中交渉を再開して長期的な合意を目指す戦略」との同局キャスター・コメントをリツイートした。
S&P500種株価指数は3191の最高値で引け、市場には「次のターゲットはスーパーチューズデーの3月3日までに3333達成」などの強気見通しが流れる。
株式市場でトランプ氏再選に向けた追い風が吹いていることは間違いない。民主党候補の巻き返しで株価上昇の流れを止めたくない。これが多くのウォール街関係者の本音だろう。
マーケットは、米連邦準備理事会(FRB)の緩和継続、米中休戦、英国情勢への安堵感の3要因により市場の視界不良が改善したことで、ハイイールド債まで買われるリスクオン状態だ。
冷静に見れば、米中交渉も、英語版、中国語版合意文書の擦り合わせ中だ。経済の都、ニューヨークの高揚感と、米中交渉最後のツメを固唾をのんで見守る政治の都ワシントンの緊張感の温度差が鮮明である。
気性の激しい大統領のツイートひとつで、マーケットが「ちゃぶ台返し」を食らうリスクをはらむ。
それゆえ、今動いているのは、短期売買に徹するヘッジファンドだけ、と言っても過言ではない。まともな市場参加者はクリスマス休暇入りを控え、ポジションの「身辺整理」に余念がない。
思い起こせば、昨年の今ごろはFRBが年4回目の利上げに踏み切り、市場は動揺。クリスマスから新年にかけて大波乱を演じた。それが今年はFRBの緩和姿勢が確認され、マーケットは祝賀ムードにあふれている。
長期化必至の米中通商摩擦や英国のEU(欧州連合)離脱過程より、最後の決め手は金融政策。改めてパウエルFRB議長の存在の重みを感じている市場である。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org