QUICKが選ぶ「中長期投資にふさわしい投信」(2019年)
QUICK資産運用研究所は2019年の1年間に活躍したファンド(投資信託)の中で「中長期投資にふさわしい投信」を5本に絞り込んで選定した。
選定対象は金融機関で一般購入可能な投信に限定し、中長期投資の観点から毎月分配型や小規模投信などは対象から除外している。ファンドの運用成績について恣意性を一切挟まずに定量的に評価する手法を用いて、中長期でリスクに見合ったリターンを上げる可能性が高いのはどんな投信か、昨年12月末時点の運用成績のデータを基に選定した。18年、19年に続き、今回の発表が3回目となる。
選定した5本は、投信の投資対象で分けた分類別ではなく、価格変動リスクの大きさで区分したリスク階級ごとに1本ずつ選定した。中長期の資産運用では、自分がどの程度のリスクをとれるか慎重に確認したうえで投資に臨むのが肝心という考え方に沿ったものだ。
リスク階級に投資資産の性格が反映
今回選定したのは、リスク階級の小さい順に「東京海上Roggeニッポン海外債券ファンド(為替ヘッジあり)」「野村インデックスファンド・内外7資産バランス・ 為替ヘッジ型 <愛称:Funds-i 内外7資産バランス・為替ヘッジ型>」「野村Jリートファンド」「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」「UBS中国株式ファンド 」の5本(図A)。
主な投資対象は順に、海外債券(為替ヘッジ)、内外7資産バランス型(為替ヘッジ)、国内REIT(不動産投資信託)、国内株、中国株となっている。
各ファンドの投資資産の性格ともいえる価格変動リスクの大きさがそのままリスク階級に反映されており、図Aに示すリターンの水準や過去の値動き(図B)を見ても、リスク階級が上がるほどリターンが高まるハイリスク・ハイリターンの傾向が確認できる。ただし、将来の高リターンが期待できるファンドはその分だけ不確実性も高まるため、購入タイミングによっては高値づかみして大きな損失を抱えてしまうおそれもある。
「東京海上Roggeニッポン海外債券ファンド (為替ヘッジあり)」は、日本企業が海外で発行した信用力の高い債券に為替変動を回避しながら投資。19年11月末時点では組み入れ債券はすべて米ドル建てで、円建ての債券に比べ利回りが高いという利点が為替ヘッジコストのデメリットを吸収し、19年は7%近いリターンを記録した。米利下げに伴う市場金利低下を受けての債券高が好成績の背景にあるとみられる。
「野村インデックスファンド・内外7資産バランス・ 為替ヘッジ型」は、5本中で唯一のインデックスファンドで、国内株・海外先進国株・国内債券・海外先進国債券・新興国債券・国内REIT(不動産投信)・海外REITの7資産に為替ヘッジして分散投資する。株式、債券、REITを各3分の1ずつ組み入れるのを基本比率にしている。
「野村Jリートファンド」は、国内REITでアクティブ運用するタイプの中では、運用力の高さに定評のある1本だ。
「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」は、経営者が実質上の主要株主になっている日本の企業に投資する。19年のリターンは約34%と日本株アクティブファンドの中でも高い成績を収めた。
「UBS中国株式ファンド」は、中国本土の人民元建ての中国株や香港上場の中国株で運用。米中貿易摩擦や中国の景気減速への懸念がうずまく中でも運用成績はいたって堅調。19年は約45%のリターンを上げた。価格変動リスクは大きいものの、中国株には侮りがたい投資妙味があるといえそうだ。
今回の選定では5本のうち、2本ずつを野村アセットマネジメントと東京海上アセットマネジメントの投信が分け合う形となり、両社の健闘が目立つ結果となった。
運用効率(シャープレシオ)をベースに選定
選定にあたっては、運用でとったリスクに見合うリターンを上げているか運用効率を測る指標(シャープレシオ)を基にした定量評価を行っている。具体的には、個々の投信について、過去1年間(12カ月)の毎月の運用効率を測って12個分合計し、合計値が5段階のリスク階級ごとに最大となった投信を各1本ずつ、計5本選んでいる。運用効率は5年、3年、1年など複数期間で毎月計測し、それらをさらに足し合わせることで、足元の運用成績に比重を置いた評価結果になるよう考慮している。
※対象は決算回数が年6回以上を除く国内公募の追加型株式投資信託。2019年末時点で(1)運用実績が6年以上(2)償還予定日までの期間が1年以上(3)原則として残高が10億円以上の条件を満たす。ETF(上場投信)、確定拠出年金(DC)専用、販売停止中、販売停止予定、限定追加型、マネープール相当、ブルベア型、ラップ口座専用、ミリオン型、一般財形型などは対象外とする。
※リスク階級は価格変動リスクをTOPIX(東証株価指数)との相対評価で表した「QUICKファンド・リスク(QFR)」を用いる。QFRはリスクが最も小さい「1」から最大の「5*」までの6段階に階級区分しているが、ブルベア型などが含まれる「5*」は除外している。
※19年1月から12月までの1年間の各月末時点における5期間(過去5年・3年・1年・6カ月・3カ月)の運用効率(シャープレシオ)を使った定量評価を行う。過去12カ月間における5期間の運用効率(年率換算)の平均値を合計し、この合計値が最大となる投信をリスク階級ごと(1~5)に1本ずつ選定。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)
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