イラン報復、日本市場も直撃
東京市場の取引開始時を狙ったかのごときタイミングで、イランによるイラク駐留米軍基地へのミサイル発射の第一報が流れた。
その後、米国とイラン両サイドから戦争へのエスカレートは望まずとのニュアンスが強いコメントが流れ、金融・資本市場はいったん「水入り」の様相だ。
まずイラン側にしてみると、シーア派の過激派組織を使わずにイラン領土内から直接ミサイルを発射したことで、「報復」の大義は果たせた。さらに弾道ミサイルの使用で、一定の軍事力を誇示できた。標的になった基地内の米国人居住地という急所を意図的に外すほどの性能があったかどうかは不明である。イラン外相のツイートは「エスカレートは望まず」との意向を明確に示している。ボールを米国側に投げたかたちだ。
一方、トランプ米大統領の関心はもっぱら大統領選にある。すでに「イラン司令官攻撃の判断は拙速」との非難も強い。トランプ氏のツイートは「被害を調査中。現時点で問題なし」のニュアンスで、意外なほど抑えた表現だ。できればこの程度で矛を収め、報復合戦は回避したい本音が透ける。米軍は事前にイランのミサイル攻撃を察知していた、との報道もある。
市場の反応もパニックにはならず、冷静に今後を見極める姿勢が目立つ。深夜のニューヨークからは、東京市場の状況についてヘッジファンドなどの様々な問い合わせが飛び込んできた。しかし、彼らはすでにポジションのリスクを抑えており、慌てた巻き戻しなどはみられない。日本時間に商いが膨らむ円が投機筋に狙われやすいのだが、特段こうした動きはない。有事の金が買われ、薄商いのなかで1トロイオンス1600ドルの大台を突破する局面はあったものの、基本的に想定内。「噂で買ってニュースで売る」動きも目立ち、その後は1600ドルの大台を維持するには至っていない。
株式市場も含め、総じて「中東有事」を殊更にはやす地合いにはなっていない。一定の冷静さを保っている。
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
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