シャープ、有機EL投資計画は柔軟に 試作に574億円
シャープは30日、スマートフォン(スマホ)向け次世代ディスプレーとされる有機ELパネルの試作ラインを堺工場(堺市)などに設けると発表した。投資額は574億円で、2018年4~6月の稼働を見込む。シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業による買収が決まった3月末、総額2000億円を投じて有機ELを量産すると発表していた。
同社は今後、スマホ大手のパネル採用の動きを見極めながら投資額や量産時期などを柔軟に見直していく方針だ。3月末の段階で有機ELの生産ラインは亀山工場(三重県亀山市)に設けるとしていたが、堺工場を主力拠点にし、一部の工程を三重工場(三重県多気町)に導入すると改めた。
また、投資計画は研究開発ラインで280億円、試作で480億円、量産で1240億円だった。研究開発ラインは着手しているがまだ小規模のため投資額は非公表。試作ラインは設備の調達などを精査した結果、当初より90億円程度増えた。
シャープは有機ELパネルの量産開始時期について18年初めを目指し、試作ラインは18年前半から本格生産を始めるとしていた。今回の発表でも「試作ラインは18年4~6月の稼働を見込むため遅れはない」と強調している。ただ、取引先などからは「既に数カ月は遅れが生じている」との見方も出ている。
有機ELパネルは韓国勢が先行している。シャープの主要顧客の米アップルのスマホ「iPhone」でも有機ELパネルが採用される見込みだが、いつ、どれくらいの規模で使われるかなど不透明な要素も残る。シャープは需要動向を分析して投資総額や量産化の時期を決める方針だ。