アジアでウーバー包囲網 ソフトバンクと中国滴滴
【重慶=多部田俊輔】中国の配車アプリ最大手、滴滴出行は24日、ソフトバンクグループと共同で東南アジアの同業最大手グラブに20億ドル(約2200億円)出資すると発表した。IT(情報技術)を活用したシェアエコノミーが世界で広がるなか、ライドシェア(相乗り)市場を切り開いた米ウーバーテクノロジーズの包囲網を敷く。シェアエコノミー分野で日本企業を交えた米中大手の陣取り合戦が加速している。
「東南アジアでネット経済のリーダーのグラブと協力していきたい」。滴滴の程維最高経営責任者(CEO)は、24日の発表文で出資の意義をこう強調した。
グラブは2012年にマレーシアで設立され、現在はシンガポールに本拠地を置く。両国に加え、インドネシア、フィリピンなど7カ国の65都市で、タクシー配車やライドシェアのサービスを展開。5000万人以上がスマートフォン(スマホ)の専用アプリに登録しているという。
滴滴の利用者数は4億人以上に達する。すでに米国でウーバーのライバルのリフトと資本を含む業務提携をしており、滴滴のアプリを米国でも使えるようにしている。
その一方で、インドの同業大手オラに出資。15年にもグラブに出資しており、今回の増資で提携関係を強化する。今回のグラブとの提携も、アジアでの足場を固めるのが狙いだ。
つばぜり合いが起きているのはライドシェア市場だけではない。民泊でも中国の途家(トゥージア)と米エアビーアンドビーがアジア市場の争奪戦を繰り広げている。
滴滴とソフトバンクは共同でゆるやかな連合体を形成し、ウーバーに対抗する狙いが透けて見える。ただ両社の狙いはそれだけではなく、シェアエコノミーでの巨大な商機を見据えたものだ。
滴滴は中国で政府と協力して渋滞緩和対策や都市計画作りに参画している。自動車が所有するものではなく、共有して利用する時代になったときのプラットフォームになるための布石であり、中国からアジア全体に広げる構想に向けた一歩と位置づける。
ソフトバンクの孫正義社長は今回の出資について「グラブは交通と決済の技術を持っている」とコメントした。中国では出資先のアリババ集団がスマホの決済サービスで先行して中国で大きな成功を収めただけに、東南アジアでもグラブをテコに決済サービスで成長を実現させる戦略を描く。