USJ、大阪に経営資源集中 沖縄進出撤回を発表
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)を運営するユー・エス・ジェイは11日、沖縄県でのテーマパーク新設計画を白紙にすると表明した。同社を買収した米親会社が採算面から大阪に次ぐ第2の拠点への投資に難色を示した。アジアで相次ぐテーマパーク新設をにらみ、経営資源を大阪に集中して大競争時代に備える。
「新たな経営体制のもとで事業の見直しをした結果、大阪のUSJに集中投資し、沖縄進出は見送ると決めた」。同社のジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)は11日、首相官邸で和泉洋人首相補佐官に対し、沖縄進出を見送る方針を伝えた。同日、沖縄県にも計画撤回を報告した。
当初、政府や地元の支援を受ける形で、2020年にも沖縄県北部の国営海洋博公園に総額600億円規模を投じテーマパークを新設する計画だった。大阪に次ぐ第2の拠点として年600万人の集客を想定していた。
報告を受けた菅義偉官房長官は11日の記者会見で「民間企業の経営判断だが、極めて残念だ。政府は沖縄振興にこれからも全力で取り組む」と語った。沖縄県の安慶田光男副知事は同日、記者団に「沖縄観光のブランド力向上につながるものと考えていた。非常に残念だ」と述べた。
東の東京ディズニーリゾート、西のUSJ――。国内のテーマパーク2強の戦いは足元ではUSJが優勢で、15年度の入園者数は14年度比9%増の1390万人と2年連続で過去最高だった。大阪の収容能力が限界に近づくなか、沖縄の第2パーク構想は次の成長のけん引役としていた。
流れが変わったのは昨年11月。米ケーブルテレビ大手コムキャストが約1840億円を投じ、米ゴールドマン・サックス系投資ファンドなどからユー・エス・ジェイを買収。新たな親会社が送り込んだボニエCEOは2月の記者会見でも沖縄計画について慎重姿勢を崩していなかった。
リスクを伴う沖縄投資よりも、大阪に磨きをかけ集客を増やし利益率も高める戦略を選んだ。国内客はレジャー消費に「費用対効果」を求める傾向が強まっている。魅力ある施設やイベントを続けないと固定客をつかめない。
ライバルは国内だけではない。今年6月には中国・上海に「ディズニーリゾート」、19年にはUSJと同系列の「ユニバーサル・スタジオ北京」がそれぞれ開業予定だ。USJの来場者増をけん引してきたアジア客の争奪戦は国境を越えて激しくなる。沖縄断念には、より手堅く果実を得ようとするUSJの狙いが透ける。(中村元、辻隆史、藤田祐樹)