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価格差23倍も 宝石の買い取り価格はこんなに違う

都内周辺20店、記者が調査

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「宝石・貴金属、高価買い取り!」。こんなのぼりを掲げる店が街中で目につく。若い時に買った派手な指輪を換金するために持ち込もうと考えている人も多いだろう。宝石の査定は難しく、買いたたかれる場合もあると耳にする。記者が実際に、宝飾会社が集積する御徒町など東京都内を中心に20カ所の買い取り業者を回って査定価格を調べてみた。

エメラルドとダイヤモンドを査定

持ち込んだのはエメラルドの指輪とダイヤモンド。ダイヤモンドは既に指輪のリングから外された1カラットの石そのもの。

先に結果だけ示すとダイヤモンドは最安値が1万5千円で最高値は35万円だった。価格差はなんと23倍。2店が「石だけではダメ」と査定をしなかった。エメラルドの指輪は1万1000円が最も安く、最高で20万円だった。こちらも18倍の差がついた。査定結果の詳細は掲載した一覧表の通りだが、以前から宝石業界関係者の間で急増した買い取り業者を巡る問題は指摘されていた。

同じ宝石でも買い取り価格はこんなに違う
場所店舗ダイヤモンドエメラルドの指輪
新宿A査定せず10万円
B10万1000円7万700円
C査定せず5万円
D5万円6万円
池袋E35万円10万円
F10万円10万円
銀座G7万円10万円
H10万円14万円
I14万3000円15万円
J25万円20万円
台東区御徒町K11万円9万6000円
L15万4500円13万4000円
M13万円12万円
N17万円15万円
新橋O16万9000円7万1945円
P14万3000円5万円
北区Q10万円3万1000円
埼玉県川口市R10万円12万円
千葉県浦安市S1万5000円1万1000円
江東区T5万400円9万1948円

査定はどのように進むのか。エメラルドの指輪とダイヤモンドの石を店頭で見せると、大半の買い取り業者がまずエメラルドの指輪を手にとる。ルーペで指輪の内側に刻まれているプラチナの純度を確認。プラチナは明確な買い取り価格が世の中に公表されており、それをもとにリングの部分の値段をはじき出す。リング部分は最も簡単に値付けできるため、多くの業者がダイヤモンドを脇に置いて、リングの価値を判断する。

今ならばプラチナは1グラム4500円ぐらいだ。持ち込んだ指輪はプラチナの部分が10グラムで純度が90%だったので、普通に計算すればリングの部分だけで4万円ほどになるはず。すでにこの段階で、一部の買い取り業者はかなり安く査定したことがわかる。

難しい「色石」の鑑定

次にリングにのるエメラルドをルーペでのぞき込む。エメラルドやルビー、サファイアなどは「色石」と呼ばれ、価値判断ができるプロは少ないといわれる。天然の本物なのか偽物か、着色されていないか、あらゆる角度からの分析が必要になり、店頭でも「色石は難しいんですよ」と正直に話す業者も目立った。

そのため、ほとんどの買い取り業者はルーペでエメラルドを観察すると「鑑別書はありますか」と聞いてくる。鑑別書は、第三者の専門審査機関による証明書で、宝石の品質にお墨付きを与えるもの。

鑑別書を提示すると、納得した表情を見せる。注意しておきたいのは、鑑別と査定の違いだ。鑑別はあくまでも宝石の真贋(しんがん)などを見極めるもので、査定は世の中の相場動向と照らし合わせて価格をはじき出す作業。天然の本物だとしても値付けは買い取り業者にゆだねられる。

宝石査定などのセミナーを各地で開催する宝石商社、諏訪貿易(東京・千代田)の宝石バイヤーは「(買い取り業者は)色石の価値をゼロにすることが多い」と話す。エメラルドの指輪は小さなダイヤモンドもちりばめられており、すべて含めた価格が最終的に提示されたが、実際に複数の業者はエメラルドの石にほとんど値段をつけなかった。

ダイヤモンドは鑑別書なしで査定に出した。買い取り業者は検査機器を持っており、本物かどうかチェック。ダイヤモンドの場合、基本的に「大きさ」「カット」「透明度」「色合い」の4点が品質を見極めるポイントになる。持ち込んだダイヤモンドは内包物があるようで、多くの業者が指摘した。市場での流通量も多いため、鑑別はそれほどばらつかない印象があった。

ただ、出てきた査定結果の差は大きい。なぜここまで価格差が出たのか、店頭での様子や会話から検討してみる。

まず高値を出したところは、傾向として査定時間が長い。安値の店は15分。長いところは1時間近くかかる。

そして、もう一つわかった重要なことは、業者が買い取った後に、有力な転売先を持っているかという点。一覧表をみると、突出した高値をだした店舗が池袋と銀座にある。実はこの2店舗は同じ買い取り業者の店舗。

この店舗は、最初、一覧にある価格よりも3割以上安い値段で査定をしてきた。ただ、記者が席を立とうとすると、引き留め、「今から買い取ってくれる中国人バイヤーと電話で相談をする」といったん離席した後に「この値段でいけます」と高値を提示してきた。本当に中国人バイヤーと相談したのかどうかは不明だが、業界関係者によると、「確実な転売先がある場合は強気に出られる」。

買い取り業者に持ち込まれた宝飾品は、そのまま中古店の店頭に並ぶわけではない。大半が買い取られた後に業者間で売買される。相対取引もあれば、専門業者によるオークションに出品されることもある。転売相手はプロになるため、ごまかしはきかない。良い宝石だと思って店頭で買い取ったものが、オークションでかなり安くなって、損をするということもあり得る。つまり査定に自信がない場合は店頭に持ち込まれた宝石に安値を提示するしかない。

買い取り業者は金やプラチナの価格が急速に上がりだした、2008年のリーマン・ショック前後から増えている。もともと指輪の素材である金とプラチナの入手が目的で、「宝飾の見方がわかっていない人たちが多すぎる」(日本リ・ジュエリー協議会)という。ダイヤモンドを査定しなかった2店も金やプラチナのリングが欲しかったようだ。

買い取り巡りトラブルも

下取りを求める人たちが殺到する一方で、国民生活センターによると、宝石の買い取りを巡る相談も頻発している。買い取り業者は「持ち込まれるのはバブル時代のものが多いですね」と話したうえで、「だいたい買い取り相場は、購入したときの値段と比べると10分の1になります」と明かした。

店頭で提示された買い取り価格が安いか高いか素人が判断するのは、正直、難しいだろう。ただ、記者が調べた結果、査定価格には数十万円以上の差は出る。

安値で買いたたかれないために一般消費者ができる対策は二つある。まずは複数の店舗を回って比較する。もうひとつは、あまり知られていないが、プロの業者が集まるオークションへの出品だ。オークション会社は一般消費者にも窓口を開いている。「プロがそのときの相場で競り合うので、最も透明性が高く、納得のいく値段になる」(都内のバイヤー)

そして、売りに行く際の心構えとして、買い取り価格に過度な期待をしないことだ。特にバブル期以前は、そもそも宝飾品の店頭価格が高かった。今以上の円安で、輸入素材で作られる宝飾品には為替の影響もあるが、ミキモトの元常務、山口遼氏は「数万円の価値のものを数百万円で売る宝飾店もあった」と当時を振り返る。できることなら下取りでがっかりしたくない。大枚をはたいて買った思い出の宝石に価値などつけずに、家内で後世へ引き継ぐのも選択肢かもしれない。(筒井恒)

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