「資質欠く」「情けない」 今村氏更迭、被災者憤り
「まだ、東北でよかった」と東日本大震災の被災者の感情を逆なでする発言をした今村雅弘復興相が25日、辞任の意向を固めた。事実上の更迭だ。「人間としての思いやりが足りない」「資質に欠けた人ばかりが就く」。被災者に寄り添うべき閣僚の失言に、震災から6年を過ぎてなお生活再建に苦しむ被災者から憤りと落胆の声が相次いだ。
「多くの人が震災で亡くなったのに、東北だからいいのか。復興相としてより、人間としての思いやりが足りない」。津波で甚大な被害が出た宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の愛島東部仮設住宅で自治会役員を務めた長沼俊幸さん(54)は憤りを隠せない。
仮設住宅には今なお約200人の被災者が暮らす。「被災地はこれからが大事な時期。この6年間の歩みをわかっていたら、こんな発言はできるはずがない」
同県山元町の新市街地「つばめの杜(もり)地区」の自治会役員、斎藤敏次さん(69)は初代の松本龍復興担当相が失言で辞任したことに触れ、「資質に欠ける人ばかりが復興相に就いているのではないか」とあきれた。
同地区は津波で不通となったJR常磐線が昨年12月に復旧し、町に活気が出てきたばかり。斎藤さんは「(失言で)被災地の足を引っ張らないでほしい」としたうえで、次の復興相については「普通に」復興に取り組む人を条件に挙げた。
4月1日に一部地域の避難指示が解除されたばかりの福島県富岡町。農家でつくる「ふるさと生産組合」の組合長、渡辺康男さん(66)は「『またか』という感じで本当に情けない。次に誰が復興相になっても期待しない」とため息を漏らす。
今村氏が記者会見で福島第1原子力発電所事故の自主避難者の帰還を「自己責任」と発言したことに「発言が軽く責任感が全くない」と感じた。「復興相は本来、被災地に通って我々の声を政府に伝えることが役目。コロコロ変わってしまうなら、こんなポストはなくしてしまった方がいい」と切り捨てた。