精神科への長期入院3.9万人削減を目標 厚労相、20年度まで
厚生労働省は、統合失調症などで精神科に長期入院する患者を2020年度末までに全国で最大3万9千人減らす目標を決めた。日本の精神科入院患者数は国際的にも高水準で、1年以上の長期入院は14年現在、18万5千人に上る。少人数で生活するグループホームなどを整備し地域社会で暮らせる人を増やす方針だ。
長期入院は過去の隔離収容政策の影響が一因で、人権上の問題が指摘されている。以前にも減らす目標を掲げたが達成できておらず、実現には財源の確保のほか、医療関係者の協力や住民の偏見の解消が必要になる。
厚労省の調査では、全国の医療機関で精神科に入院している患者は全体で28万9千人。このうち64%を占める長期入院患者を20年度末までに2万8千~3万9千人減らす。目標値は、自治体がつくる18年度以降の障害福祉計画に反映させる。
厚労省は患者が社会で安心して暮らせる「地域包括ケアシステム」の構築を目指す。高齢者の介護分野で導入が進む仕組みにならって、医療や福祉関係者らが連携できる協議の場を設け、患者が自宅やグループホームなどで幅広い支援を受けられるようにする。効果的な治療薬の普及も進める。
現在いる長期入院患者の退院を促すほか、新規の患者の入院が長引かないようにして削減目標を実現させたい考え。新たに入院する患者のうち、3カ月後の退院者数を69%以上、6カ月後で84%以上、1年後では90%以上とする目標も定めた。
厚労省は04年に示した精神医療の改革ビジョンで、10年間で約7万床を減らす目標を掲げたが、調査した02~14年に減少したのは1万8千床にとどまった。〔共同〕