阪神のリストバンド、刺しゅう・配色に石川発の技
プランドル飯田、公式ファングッズを製造・販売
プロ野球の公式戦が3月25日に始まる。注目チームの一つは監督が金本知憲氏に代わった阪神タイガースだろう。球団の公式ファングッズであるリストバンドの製造・販売元が、石川県にある。刺しゅうやサポーターの生産を手掛けるプランドル飯田(津幡町)だ。
同社を訪ねると、選手名や背番号、タイガースのロゴなどが入った今年用のリストバンドが仕上がっていた。金本監督の「6」、2軍監督に就いた掛布雅之氏の「31」などが新製品だ。
色合いは同社が独自に決める。例えば藤波晋太郎投手の製品は、本人が好む金と赤を使って背番号「19」を彩った。鳥谷敬内野手については、打席で足に着ける防具の色を取り入れる。色は毎年変わるため、今年の商品はオープン戦で同選手の映像を確認してから、配色を決める予定だ。
年間に5万~6万個が売れる。他社製の公式グッズもあるが、色使いやデザイン性では明らかに同社製のリストバンドが目立つ。凝ったデザインを売り物にして製造・販売権を得たのは、2008年に遡る。
リストバンドを手掛け始めたのは1990年代、引退した新庄剛志さんらが人気を集めていたころだ。東京の企業から石川県のタオル問屋を通じて製造の依頼があり、下請けとして生産していた。背番号が入る程度の簡単なものだった。
2000年代半ばに需要が落ち込むと、飯田道昭社長は阪神球団に試作品を持ち込む。刺しゅうで選手名を刻み、糸は光を吸収して暗い場所でも徐々に光を放つ蓄光糸を採用した。少しでも派手に見せる工夫だ。縦方向に筋を入れて縦じまも表現した。新機軸の商品を見た球団は、公式グッズとして採用を決めた。
最も難しいのは「刺しゅうの図面作り」(飯田託朗取締役)。図面を刺しゅう機にインプットして仕上げるが、綿糸やウレタンゴムで編んだ生地は目が粗く、針の動きがぶれる。針のぶれを勘案した図面をどう描くかが勝負になる。刺しゅうで創業して約40年、きめ細かい技が詰まっている。
需要予測も大切な仕事だ。見通しが外れれば売れ残りが増え、収益にはマイナスになる。今年は金本監督と鳥谷内野手が双璧と読み、まず2000個ずつを準備する。選手の欠場は販売に響くため「シーズン中はけががないように祈る毎日」(飯田社長)だ。