国産ロケットの歴史学ぼう 角田宇宙センター(宮城県角田市)
おもてなし 魅せどころ
小惑星探査機「はやぶさ2」が7月11日、世界で初めて小惑星の地中にある砂や石の採取に成功した。そのはやぶさ2を打ち上げたロケット「H2A」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の角田宇宙センター(宮城県角田市)で開発されている。
センターはロケットエンジンの研究から開発まで一貫して手掛け、一般客が見学できる展示室にはロケットの模型や実際のエンジンなどが所狭しと並ぶ。夏休み期間中ということもあって、子どもたちに最も人気なのが、はやぶさのシミュレーションゲームだ。
パソコンのマウスを使ってはやぶさの打ち上げから着陸、地球帰還までのミッションをこなす。難易度は高く、職員ですら100点を取るのに3時間かかることも。親子で訪れた清水郁子さんは「難しい宇宙のことをゲームを通して分かりやすく解説してくれて、子どもの刺激になればいい」と笑顔を見せる。
ここではH2Aロケットのほか、国際宇宙ステーションへ物資を届ける補給機「こうのとり」専用のH2Bロケットのエンジンも造られている。展示室の入り口では各ロケットを20分の1のスケールで再現した模型が出迎えてくれる。
日本のロケット開発史を象徴するエンジンなどが並ぶなか、JAXAが過去の教訓を伝えるために展示するのが「LE│7エンジン」だ。1999年11月、H2ロケット8号機のエンジンが異常停止し、打ち上げが失敗。JAXAは原因究明のため水深約3000メートルからエンジンを引き上げ、失敗を忘れないという自戒も込めてエンジンを展示している。
「宇宙開発を成功へ導く礎にもなっている」。吉田誠所長はLE│7エンジンの意義を強調する。現在、H2Aロケットの打ち上げ成功率は国際水準の95%を超え、H2Bロケットは100%を誇る。
最近では海外の研究者やインバウンド(訪日外国人)の来場も増えている。センター職員の景山やちよさんは「最近では外国人も多く見かけるようになった」と話す。センターは英語で表記されたA4判のパンフレットを新たに作り、順次、多言語表記を増やしていくという。
9月8日には研究施設の一般公開も予定されている。ロケットエンジンの燃焼試験をする設備を間近に見ることができ、年に一度の貴重な機会となる。
(仙台支局 田村匠)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2019年8月5日付]