会議を効率よくする努力
新風シリコンバレー ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長 ロッシェル・カップ氏
シリコンバレーのビジネスパーソンは短期間でできるだけ多くの成果を出すように常に努力している。そのため、時間をたくさん使うものの付加価値が低いものに対しては、改善対象の的になる。その中の一つで大きいものとして挙げられるのは会議である。
多くのビジネスパーソンにとって会議は頭痛のタネである。会議が増えてしまうと、スケジュールを埋めてしまう。その結果、個人が仕事と向き合い、じっくり考えられる時間が減る。定例会議や「会議のための会議」が増え、目的やアジェンダが明確ではない会議は多い。会議の時間中ダラダラし、明白な結論がでないまま終わってしまいがち。会議出席のために費やす移動時間も無駄である。
シリコンバレーは従来のやり方を破壊することが好きなので、そのアプローチを会議にも応用している。そのとてもドラマチックな例は、クラウドストレージサービスであるドロップボックスがしたことだ。
同社は定例会議がとても増えて、会社の貴重な存在である技術者が時間の半分以上を会議に使っていることに気づいた。その対策として、ある日の夜の間、一方的に全社員のカレンダーから全ての定例会議を削除した。その後、定例会議開催は2週間禁止され、復活させたいのであればそれ相応の十分な理由が必要という条件を設けた。その結果、定例会議の数をぐっと減らすことに成功した。
会議のない日を設定することはシリコンバレーの最近のはやりである。そうすることによって、従業員が仕事に長く集中できる時間をつくれる。例えば、フェイスブックやソフトウエア会社アサナは毎週水曜日の会議を禁止している。
また、皆が会議を座ったまま行うと、居心地良くなって会議が長く続く傾向にある。その対策としての立ちながらの会議はシリコンバレーでも人気が高い。一歩進んで、歩きながらの会議をしている会社もある。フェイスブックの新オフィスビルでは、そのための散歩パスも取り入れた。
たくさんの人を会議に招待し、その結果、必要以上の人数が参加してしまう会議はとても効率が悪いというのは言うまでもないだろう。対策として、シリコンバレーの会社では会議の参加者を制限している。
有名なのは、アマゾンの創立者ジェフ・ベゾスの「2つのピザルール」。それを食べられる人数(約6人)以上は会議に呼んではいけないとしている。彼発案の会議を効率化する他のやり方としては、パワーポイントを禁止して、会議の最初に参加者の皆に同じ6ページメモを配り30分ぐらい皆がそれを沈黙で読んでおいて、会議ではその同じ情報に基づいて議論できるようにしている。その結果、会議での話が深まり、効果的になる。
日本の会社でも、会議が従業員の時間を無駄にしてしまう傾向が強く見られる。このシリコンバレー企業の会議対策からヒントを得て、自分の会社でトライしてみてはいかがであろうか。シリコンバレー式生産性を実現したいならば、きっと役立つに違いない。
[日経産業新聞2019年6月11日付]