seak、素人をITで呼び込む 農家にもFCの時代が来る!?
先読みウェブワールド (野呂エイシロウ氏)
最近、筆者は懸命に野菜を食べている。そんな中、うれしいニュースが飛び込んできた。パワーサラダのハイファイブ(東京・新宿)のサラダがナチュラルローソンで食べられるようになったのだ。水野裕嗣代表はもともとテレビディレクター。米国で食べたサラダが忘れられず、企業を立ち上げたという。
そういえば農林水産省の人と話していて、「農家ってどうやってなるんだっけ?」という疑問が湧いてきた。親が農家なら後を継ぐ。ほかには農業をしている人を訪ねて修行するのだろうか。インディードやスタンバイなどの求人サイトで検索すると、農家の募集は数千はあるようだ。
さらに調べると、ゼロから農業を始めるにはたくさんのハードルが見つかる。土地の確保から機材の準備、栽培技術の習得や肥料のやり方。収穫の仕方から販売まで山のようにやるべきことがある。
そこで誕生したのが、農家集団のseak(東京・港)のサービス「LEAP」だ。LEAPは「Let's Agriculture Program」の頭文字。農家をフランチャイズ(FC)化し、素人でも参入できるようにする。コンビニエンスストアなどと同様に本部がノウハウや仕組みを提供し、加盟する生産者は野菜を育てたら買い取ってもらえる。
栗田紘社長は脱サラをしてトマト栽培を始め、2015年に神奈川県藤沢市から新規就農者の認定を受けた。「私自身が農家です」。本人が好きな野菜はキュウリ、ズッキーニ、イチゴだという。
「自分が農家になった際、あまりにも多くの参入障壁を感じた。試行錯誤して積み上げた解決策をオープンにすることは価値が高いのではないか」。そこからFC化を思いついたという。
LEAPでは新規就農のプロセスを準備、農地、施設や機材、栽培、販売の5つに分け、各分野で支援体制を作ったという。耕作放棄地を自治体の認定を得て農地として賃貸で確保。就農希望者は場所などの条件を登録すれば、自分に合った農地を探せ農業を始められる。
栽培方法も独特で、丈夫な袋に植え独自の土を使う「袋栽培」と、肥料や害虫駆除などをまとめて管理する「肥培管理」を活用する。ビニールハウスで効率を高め、経費は45%減らせるという。ウェブやセンサーなどIT(情報技術)を駆使。農業をデジタル化したプラットフォームビジネスでもある。
神奈川県藤沢市の拠点では、元警察官や元サッカー選手、脱サラ組などが農業を始めている。初期費用は1億円ほどかかるが、金融機関と連携し自己資金が少なくても始められる工夫もしている。
「農業所得を一定額保証できるレベルまで、農業経営の指標と技術を磨き込む」と栗田社長。今秋から本格的に利用者を呼び込む考えだ。
収穫した野菜はseakのブランドで販売するが、稼ぐ仕組みはまだ確立しきれていない。それでも農業のFC化は可能性を秘めている。今年の収穫期が楽しみだ。
[日経MJ2019年4月22日付]