19年はスマホ決済勝負の年 中小店舗でも普及加速
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)
新しい元号が始まる2019年は、多くの日本企業にとって未来を展望する節目の年となるだろう。今年最初のコラムなので、19年を展望したい。
18年末のペイペイのキャンペーンが話題となった、スマートフォン(スマホ)決済はいよいよ本格的なシェア争いに突入するだろう。
10月に控える消費増税対策の目玉のひとつとして、キャッシュレス決済でのポイント還元があげられており、大手だけでなく中小店舗や飲食店のキャッシュレス対応が本格的に進むことになる。裾野が広がることによって外国人旅行客の利便性も高まることが期待される。
最近の外国人旅行客は日本の身近なライフスタイル体験が盛り上がっており、地元の居酒屋などに訪れる外国人旅行者もますます増加するだろう。デジタルの決済はプラットフォームとして、様々な付加価値提供を容易にする側面も大きい。店舗への誘導や事前予約購入などが低コストで実現できるようになるため、脆弱な中小店舗の経営基盤を強くするIT(情報技術)武装の中核になりそうだ。まずは地域単位で普及することが大事になる年だ。
移動手段をサービスとして提供する「MaaS(マース)」も18年から盛り上がりを見せている。人工知能(AI)で注目されている自動運転は、自家用車が自動運転車として普及するにはまだまだ10年はかかりそうな状況だ。
一方で、19年は国内でも交通機関の具体的な実証実験がいくつも始まるだろう。バスやタクシー、カーシェアやライドシェア、シェアバイクなど多様な移動手段をアプリひとつで決済する動きはキャッシュレス化と連動しており、マースの普及は日本でも早く進みそうだ。
この流れの中で、19年は交通機関の顧客サービス向けデジタル化投資が進み、従来の交通分類の枠を越えた資本提携なども進む年になるのではないだろうか。
18年末の入管法改正で日本でも本格的な外国人労働者の受け入れが始まる。様々な現場で深刻な人手不足が続いており、それほど抵抗感無く外国人労働者が増えることが予想される。
5年間の短期滞在者だけでなく、長期滞在を想定した特定技能2号資格者が増えれば、生活者としての外国人労働者を対象にした新市場が生まれる。日本語が不得手な外国人向けにスマホを活用したサービスも増えそうだ。外国人向けのスタートアップ企業が19年は続々登場してきそうだ。
キャッシュレスも移動も外国人労働者も、これからの日本社会を支える重要な社会インフラといえる。一過性のブームではなく、社会全体のコンセンサスを猪突(ちょとつ)猛進で形成しながら、基盤を構築することが大事だ。
スタートアップだけでなく、業界の垣根を越えた大企業同士のオープンな連携や、政府による規制緩和などがこれまで以上に求められる。
[日経MJ2019年1月18日付]