外国人・若者も いざ尋常に 東映太秦映画村(京都市)
おもてなし 魅せどころ
観光客をひきつける古都・京都。舞妓(まいこ)や神社仏閣など日本らしさへのあこがれを背景に、インバウンド(訪日外国人)や若者など新たな客層が増えているのが東映太秦映画村(京都市)だ。映画やテレビの時代劇が下火になるなか、これまでの時代劇やアトラクションの枠に収まらない取り組みに乗り出す。
JR京都駅から最寄りの花園駅まで電車に乗り、そこから10分ほど歩くと太秦映画村に着く。京都・二条城を模した大手門が正面で出迎える。紅葉シーズンの週末は家族連れでにぎわい、修学旅行の小中学生も数多く訪れる。
一番人気は、隣接する撮影所の雰囲気を楽しめるオープンセットだ。村内に再現した江戸の街並みは、日本橋や呉服問屋など数十軒が並ぶ。映画の撮影で実際に使うため、タイミングが合えば撮影現場を見学できる。映画「銀魂」でもセットとして使い、時代劇ファンだけでなくSNS(交流サイト)映えを狙う若者にも評判だ。
「サムライが街を歩いていて興奮しました」と話すのはタイから観光に来たクェイさん。インターネットで検索して訪れた。特に大満足したというのがチャンバラ劇だ。「実際の太刀さばきを見れてうれしい」と盛り上がっていた。訪日客に人気の体験型アトラクションも充実している。
太秦映画村は1975年、日本で初めて時代劇セットを体験できるテーマパークとして開業した。コト消費の先駆けで、「お茶の間の時代劇とともに成長してきた」(運営する東映京都スタジオの山口記弘社長)。累計で6千万人が来場し、時代劇を中心としたコンテンツは年配の世代に根強い人気がある。
近年は若者や外国人の取り込みに力を入れる。19年1月に始めるのがアニメ「テニスの王子様」を時代劇風にアレンジしたイベント。複製原画展や宝探しを展開する。根強い女性ファンがいるオンラインゲーム「刀剣乱舞」ともコラボし、駅や映画村を巡るスタンプラリーを実施した。
訪日客向けには12月、忍者の所作を教えるサービスを始めた。村内を案内するツアーも準備。7月には英語や中国語を話せるスタッフを配置し、SNSでの発信も強化している。
映画やテレビで時代劇は減っている。若者や外国人などを「新たな時代劇で惹きつける」(山口社長)工夫は始まったばかりだ。
(京都支社 赤間建哉)
[日経MJ 観光・インバウンド面 2018年12月9日付]