若者 次はティックトック
SmartTimes ユーザーローカル社長 伊藤将雄氏
「インスタ映え」という言葉がはやり、画像SNS(交流サイト)のインスタグラムの認知度はあらゆる年齢層で高くなったが、若年層の間では新たにティックトック(TikTok)が人気となってきている。2016年にスタートした中国製のスマートフォン(スマホ)向けショートムービーアプリだ。
世界での月間アクティブ利用者は現在5億人ほど。SNSに関する分析を仕事としている筆者も今春、新入社員に普段どんなSNSアプリを見ているか聞いたところ、ティックトックの名前が出てきたので、あわててインストールした。
もともとは「リップシンク」、すなわち口パクのためのアプリで、特定の音楽やナレーションに合わせて演者が口パク動画を撮ってアップするものだったらしい。現在人気の動画は、お笑いの音声に合わせた口パク、曲に合わせて振り付けしたダンス、ファッション、スポーツなどで、コミカルな動画が大量にアップロードされている。
ユーチューブとの違いは、15秒以下の動画がメインであることと、スマホ視聴専用のため、縦長の動画が中心であることだ。ユーチューブの人気配信者をユーチューバーと呼ぶように、ティックトックの人気動画作成者をティックトッカーと呼ぶ。当社では人気のティックトッカーを一覧できるランキングを公開した。(https://tiktok-ranking.userlocal.jp/)
このランキングには小学生、中学生の女子が数多くランクインしている。たとえば第1位の野々山ひなたさんはファンが220万人もいるのだが、まだ小学6年生だ。反対に20代以降や男性はとても少ない。30代以上の男性でランクインしたのは、ピコ太郎さんと狩野英孝さんぐらいだ。
このアプリには人工知能(AI)関連のアルゴリズムが実装されていることも特徴だ。たとえば、映像内の手の動きをAIがスキャンして、手の動きにあわせて雨のCGを任意に動かす、といったエフェクトが内蔵されている。表情をおかしな「変顔」に変えたり、髪の色を変化させたりすることも可能だ。
ビジネスとしても注目されており、ティックトックを運営するバイトダンス社の資金調達にソフトバンクが参加する見込み、という報道があったばかり。
ティックトック内でよく使われる曲がヒットする、ということも増えており、倖田來未さんがカバーする「め組のひと」、男性ユニットのDA PUMPの「U.S.A」といった曲が特に盛り上がっている。
国内企業のビジネス利用の事例も出てきており、ローソンが実施した揚げチキンのキャンペーン動画「#いつでもエルチキ」の再生総数は数千万回にのぼるという。今後、食品、消費財を中心にティックトックを利用したキャンペーンが増えていくと思われる。
[日経産業新聞2018年10月31日付]
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