報復関税とは WTOの紛争処理能力に陰りも
きょうのことば
▼報復関税 貿易相手国が自国の輸出品に対して世界貿易機関(WTO)ルールに違反して不利益な扱いをしている時に、その報復として同額までの範囲で課す関税。WTOのルールで認められている。結果的に相手国の輸出産業にも不利益をもたらすことから、一方的な高関税などの措置を抑止する効果が期待される。
WTOルールに基づく報復関税は、原則としてWTOの紛争解決手続きを経る必要がある。2002年に米国が国内産業保護のために鉄鋼に最高30%の関税を課した際は、WTOは翌03年に米国の違反を認定し、これを受けた欧州連合(EU)が報復関税の発動を警告した。最終的に米国は関税を撤廃した。
ただ、最近の報復合戦は終わりが見えにくい。米国が3月に発動した鉄鋼・アルミ関税に対抗して、中国やEUなどは報復関税を実施した。知的財産侵害を理由とした米中間の関税の応酬は第3弾までに至った。米中は互いに相手国をWTOに提訴しているが、WTOの紛争処理能力は近年、低下や遅れが懸念されている。トランプ米大統領はWTOからの脱退も示唆している。