Vチューバーが告げる未来のビジネス AI融合で身代わりに
奔流eビジネス (D4DR社長 藤元健太郎氏)
「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」が急増している。最近の調査では日本でも1日に20人以上増加しており、すでに5000人以上のVチューバーが誕生しているという。Vチューバーとは自分の顔の表情や手足の動きをリアルタイムでCG(コンピューターグラフィックス)キャラクターに反映したもので、動画配信などで目にする機会が増えている。
ユーチューバーと同じく再生回数で広告費を稼ぐビジネスモデルが多いが、Vチューバーとしての新しいビジネスモデルが模索され始めている。
例えば人工知能(AI)プログラミング講座を提供するアイデミーはVチューバーが講師を務める無料講座の動画配信を始めた。有料講座のプロモーションにする狙いだ。CGのため、スキャンダルや病気といった突発的なリスクが無い安心なタレントとも言える。
ソーシャルゲーム大手のグリーは8月から、グループ会社を通じてVチューバー専用ライブ配信サービス「REALITY」を展開している。ゲーム市場の競争が厳しくなる中で、SNS(交流サイト)とゲームというこれまでのノウハウを活用した新しい有望市場として力を入れている。
REALITYではVチューバーとリアルタイムにコミュニケーションしながら、花火やぬいぐるみなど有料ギフトをプレゼントできるようになっている。1本1万円するフラワースタンドが30本購入されることもあり,時給30万円を稼ぐVチューバーも出てきているということになる。
グリーは同時にVチューバー向け撮影スタジオの研究開発にも力を入れている。最新鋭のスタジオ環境を提供することで、有望なVチューバーの育成や囲い込みにつなげようとしている。地方でもスタジオを展開することも視野に入れている。
グリーのVRStudioLabの白井暁彦ディレクターは「Vチューバーを単なるアバター機能として見てはいけない。みんながなりたい自分になることができる新しいライブエンターティメントとして見るべきだ」と語る。
今後は企業が自社のキャラクターをVチューバー化することで、新しいプロモーションや広報ビジネスなども想定される,また地方自治体のゆるキャラをVチューバー化することでの地方創生ビジネスなど市場の広がりは様々期待されている。自宅で自分だけのVチューバーと会話できる機器といったアバタービジネスなども出てきそうだ。
誰もが自分のアバターを持つ時代はそう遠くないかもしれない。それは人間が自分を変身させ、テレポートでどこにでも登場できる力を疑似的に身に付けることでもある。すでにソーシャルメディア上では、なりたいと願う自分の姿を写真で表現するといった活動は当たり前となっている。
Vチューバーの技術とAIが融合することで、寝ている間に自分に代わってアバターが様々な人と出会ったり、簡単な仕事を処理してくれたりする時代もすぐ訪れそうだ。
[日経MJ2018年9月14日付]
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