検査とワクチンで風疹を防げ
風疹の感染が拡大している。発熱、発疹のほか、妊婦が感染すると出生児の心機能などに障害が出ることがあり注意が必要だ。国や自治体は感染が目立つ成人男性の検査と予防接種を促すよう、対策を急ぐべきだ。
風疹は症状が出る前から飛沫感染で容易にうつる。今年に入ってからの患者数は首都圏を中心に360人を超え、すでに昨年1年間の4倍近い。
政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年度までに国内の風疹をなくす目標を掲げる。だが、このままでは目標達成はおろか、20年ごろに流行がピークとなる恐れすらある。
13年の流行時には米国疾病対策センターが注意情報を出し、特に予防対策をしていない妊婦は日本への渡航を避けるべきだとした。五輪期間中にこうした状況になれば、競技に水を差す。
予防用のワクチンは安全性が高いとされるが、乳幼児期の2回の定期接種が導入される前の世代は受けていない人も多い。30代後半~50代の男性の2割前後は、ウイルスに対する抗体をもたない。
この比率は過去10年ほど下がっていない。抗体検査が広がらないうえに、費用が数千~1万円程度かかるため、ワクチン接種を受けない人が多いからだ。
国は自治体を通して、成人の抗体検査の費用を補助している。しかし自治体によっては、対象は妊娠を予定または希望する女性のみで、夫や同居男性を含まない。
ワクチン接種に対する補助も、自治体によって独自の制度があったりなかったりする。流行の背景には、国や自治体の予防策がちぐはぐで十分な効果をあげていないことがある。
厚生労働省は今年度中をめどに予防指針を改正し、抗体をもたない人のワクチン接種の重要性を明記する方針だ。補助の拡大を含め、具体策の検討を急ぐ必要がある。あわせて、一人ひとりが予防法を理解し、感染を防ぐ自覚をもつことが大切だ。