海上空港のもろさ補う総合的な対策を
海上空港のもろさを図らずも露呈した形だ。台風21号がもたらした高潮で滑走路が冠水した関西国際空港である。国内線の一部は運航を再開したが、物流や観光に大きな影響を及ぼしている。
1994年に開港した関空は地盤が軟弱で、今も地盤沈下が続く。護岸のかさ上げなどで対応してきたが、今回の台風で滑走路や駐機場などが冠水した。
確かに、空港を襲った高潮は従来の想定を上回った。台風は非常に強い勢力のまま大阪湾の西を通り、低い気圧のために海面がストローで吸い上げられるように持ち上がった。湾内に強風が吹き寄せ、潮位はさらに上昇した。
しかし、事前の備えが十分ではなかったことが被害を深刻にした面もある。ビルの地下にあった防災センターや配電設備が早々に浸水し、大規模な停電が発生した。機器類の設置場所や排水対策に不備があったのではないか。
利用者ら約8千人が長時間にわたって空港内にとじ込められたのも問題だ。連絡橋が利用できなければ空港が孤立することはわかっていたはずだ。利用客への情報提供も極めて不十分だった。
国内には関空以外にも、中部国際空港や神戸空港、北九州空港など各地に海上空港がある。各空港は防災対策や事業継続計画(BCP)が適切かどうかを、総点検する必要があるだろう。
滑走路の復旧が遅れれば経済への影響は甚大になる。他の空港を活用して国内外との空路を維持する方策も検討すべきだ。
なかでも、関西エアポートは関空、大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港を一体で運営している。官民が連携して、国際線の機能維持に全力を挙げてほしい。
空港に限らず、今回の台風は近畿地方などに甚大な被害をもたらした。電柱の大規模な倒壊などで各地で停電し、住宅の屋根や車が強風で吹き飛ばされた。大阪や和歌山では最大瞬間風速が50メートル前後に達し、60メートル近いところもあった。新幹線並みの速さだ。
高潮や高波の被害も、より深刻になる可能性があった。海水が中小河川を遡り、下水道が逆流を起こせば道路などが冠水し、交通網を寸断しかねなかった。
多発する豪雨災害を受け、大雨に対する情報収集や対策は進みつつある。それに比べて、強風や高潮へ油断がなかったのか。しっかりと検証すべきだ。
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