北海道地震で露呈した電力供給の弱点
北海道南西部で最大震度7の地震が起き、大きな被害が出た。大規模な土砂崩れや家屋の倒壊により、死傷者や安否不明者が相次いでいる。火力発電所の停止で北海道の全域が停電する異常事態に発展し、市民生活や企業活動にも影響が広がった。
気象庁によれば、胆振(いぶり)地方を震源とするマグニチュード(M)6.7の直下型地震で、今後も1週間程度は強い揺れが続く恐れがある。消防や警察、自衛隊は二次災害に注意しながら、まずは安否不明者の捜索や救出に全力を挙げてほしい。
厚真町などで起きた広域の土砂災害は、火山性のもろい地盤が揺さぶられたことが原因とみられる。前日までに日本列島を通過した台風21号の降雨で地盤が緩んでいた疑いもある。今後の降雨で新たな土砂災害が起きる恐れもあり、警戒を怠れない。
停電が一時、全道の295万戸に及んだことは、電力供給の脆弱性という重い教訓を突きつけた。交通機関がマヒし、道路の信号機も止まった。医療機関が外来患者の受け入れを止め、影響は生活や経済に広く及んだ。
北海道電力によれば、震源に近い苫東厚真火力発電所が緊急停止したことをきっかけに、他の発電所も連鎖的に止まった。苫東厚真は北海道電にとって最大の火力発電所で、地震発生時には使用電力の約半分をこの発電所だけで供給していた。
北海道と本州を結ぶ送電線は建設に多額のコストがかかり、容量は限られている。電気が足りなくなっても本州から迅速に届けられないという、北海道ならではの事情も重なった。
経済産業省は停電の解消に1週間以上かかるとみている。経済活動や生活への影響が拡大するのは避けられない。北海道電は復旧に全力を尽くしたうえで、原因を十分に検証する必要がある。
他の電力会社でも同様の事態が起きないとは限らない。すべての発電所が止まる事態をどう回避するのか。止まった場合にどう早期復旧させるか。あらゆる事態を考え、点検すべきだ。
北海道の太平洋沿岸は歴史的に大地震や津波、火山噴火が多く、もともと災害リスクが高い地域とされてきた。こうした場所に火力発電所が集中している状況を長期的な視点から是正することも、国や電力会社に課せられた責務だ。